⚠️ 基本ネタバレしております。ご注意ください。

【伊坂幸太郎】 シーソーモンスター 

「小説BOC」螺旋プロジェクト

新聞広告で見て 読んでみたいと思いました。

伊坂幸太郎さんの作品の「フーガはユーガ」 本屋大賞にノミネートされていましたが 突拍子もない設定で食し動かず 笑 替りにこちらの作品を読みました。

 

4月9日に発刊された シーソーモンスターは、雑誌「小説BOC」(中央公論新社の季刊文芸誌)の「螺旋プロジェクト」で8組9人の作家による壮大な文芸競作企画で書かれた作品の一つです。

シーソーモンスターの本の中には 表題作 シーソーモンスターとスピンモンスターの2作品が収められています。

螺旋プロジェクト

以下の3つのルールに従って、古代から未来までの日本で起こる「海族」と「山族」の闘いをそれぞれの作家が 過去・現在・未来の どこかを切り取って描いています。

 

ルール1

「海族」と「山族」、2つの種族の対立構造を描く

ルール2

全ての作品に同じ「隠れキャラクター」を登場させる

ルール3

任意で登場させられる共通アイテムが複数ある

 

朝井リョウ 死にがいを求めて生きているの (平成)

伊坂幸太郎 シーソーモンスター (昭和後期) スピンモンスター (近未来)

天野純希 もののふの国 (中世・近世)

薬丸岳 蒼色の大地 (明治)

乾ルカ コイコワレ (昭和前記)

澤田瞳子 月人壮士 (古代)

吉田篤弘 天使も怪物も眠る夜 (未来)

大森兄弟 ウナノハテノガタ (原始)

 

これらの「物語がつながる感動に君はいくつ出会えるか?」 うわ~全部読むべき??

シーソーモンスター 感想

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ネタバレあります、ご注意ください。

 

冒頭は、妻と母親の板挟みになっている男 直人が主人公です。 飲み屋で職場の先輩の綿貫に愚痴を聞いてもらうところから始まります。

妻と姑の板挟みは、よくある話です。その手合のものか、と思ってたら…

 

身近で次々と起きる事件は 姑が犯人なのでは?と疑い始める妻・宮子。その妻は 以前諜報機関に所属し 様々な訓練も受けてきた女性だったのです。

が、義母のかなりのツワモノ、宮子とはぶつかってばかりいました。

ある日 家に来たセールスマンが かつて 日本には、海族と山族がいて 両者は決して相容れない、という話しを宮子にきかせるのでした。お義母さんと自分は海族と山族、共にわかり会えることはないのでは?と納得。

 

直人の製薬会社は羽振りのいいO病院に薬を卸していて 若社長に代替わりしたばかり。その担当に、と綿貫からバトンを渡されました。

O病院は医療費の不正請求をしていることを知った直人は…コワイ系の人たちに襲われ連れ去られました。

 

自分が襲われたり当て逃げされたりする原因は何か 義母の周辺を元同僚に探ってもらうと 母は関係なく、実はソ連の暗殺機関に狙われていたことがわかりました。

以前 神経毒を日本にばらまこうとしたのを宮子が寸でのところで阻止したのを恨まれていたようです。

 

直人は 建設中のビルに連れて行かれ 自殺にみせかけて殺されようとしていましたが 宮子の同僚に逆探知をしてもらって居場所を突き止め乗り込んでいきました。が、敵もさるもの 宮子の不意をついて攻撃されるうちにあわや…のところで聞き慣れた声が助太刀に!

なんと直人のお母さん、義母が助けに来てくれたのです。

 

そこで明かされたのが 実は お母さんも宮子と同じ諜報機関で働いていて、息子と結婚するのも 事前に察知していたのでした。

 

直人が病院に運ばれ 輸血をする段になって 義母が血液型が違うから、と採血を拒否。不思議に思った宮子に重い口を開いた義母は

直人は実の子供ではない、昔 踏み込んだ家に 幼い直人がいて家は火に包まれていた… 子供のいない夫婦は直人を我が子として引取育てたのでした。

 

前半は、宮子視点で お義母さんが怪しい、なにかある、とページを繰る手が止まらず、

途中からは 宮子の職業が諜報員だったとわかって、つぎつぎと迫りくる暴漢や 当てにくる車などが誰の差し金かと、知りたくて どんどん読み進み

病院の不正請求について尋ねた直人に 前任者の綿貫とコワイ系のお兄さんがつるんで直人をシメにやってくる…と緊張しながら読み

あっという間に読み終えました。

 

物語の根幹は 海族と山族の物語ですから 相容れない 嫁と姑をそれに当てはめているのでしょう。

螺旋プロジェクとの意図に添って書かれていますが サスペンスタッチで面白かったです。

 

そして 時代がバブルの頃なのも懐かしく感じました。

 

これから スピンモンスター(近未来の話し)を読んでみます。