この本の内容は 真実かフィクションか??
2019年2月16日 朝日新聞読書欄 「売れてる本」のコーナーで紹介されていた本です。
真実かフィクションか、と読者に思わせる「出版禁止」、ぞわっと怖さが忍び寄って来る感じでした。最近読んだ、本屋大賞ノミネート作品の「火のないところに煙は」もどこからが現実でどこからが創作なのか ひょっとしてすべて現実に起きたことなのか?と気持ちが悪い小説でした。
この「府中三億円事件…」も三億円事件の真犯人の真実の告白を綴っています。半信半疑で読み始めました。
なぜなら 小説投稿サイト「小説家になろう」で800万ページビューになって出版することになったらしいのです。ネット小説という手法と 大切な真実の告白、というのが結びつかない感じがしました。
コレは真実かもしれない、と思う根拠
根拠の第一は、犯人しか知り得ない事実を知っている、という点。
ジュラルミンケースには現金・ボーナス袋のほかにある特殊な「モノ」が入っていたという。
発炎筒の特殊な点火手法やジュラルミンケースに留置された「モノ」は一般発表されておらず、捜査関係者と真犯人しか知らないはずである。
ウィキペディアより 引用
本書では、発煙筒の点火方法や ジュラルミンケースにわざと入れておいた「モノ」について告白しています。
その方法が 警察が知っている事実と一致するのかどうか 読者には確かめようがありませんが ずーっと読み進めて来て 最後にこの重大発表があるので信じてしまいます。
そして 何より 犯人の心情として 今は70歳になろうとしている彼が どこかで真実を打ち明けたい、とおもっているのではないか、と感じました。このまま、真実が葬り去られることをよしとしなかったのでは、と。
更に この事実を白日の下に晒す事で贖罪の意味もあったのでは? 犯人・白田が当初一緒に計画していた省吾を裏切って単独犯行に及びました。
事件に使うつもりで借りていた省吾の父(警察官で白バイ乗り)の警察手帳を 空になったジュラルミンケースに入れ 疑いが省吾に向くように仕向けたのでした。
この警察手帳は、正式な遺留品として公開されていません。あの日から今日まで、隠蔽され続けているのです。「警察官の息子と事件をつなぐ決定的な証拠である」という理由で…。
本文より引用
本当でしょうか?
白田が裏切ったことで 省吾は事件から5日後に自殺してしまいます。(と、報道されました。父に殺された説もあり)
間接的に自分が殺したのと同じ、それを告白したかったのだと思いました。
大金も、好きな女性も手に入れたけれど 親友を自分の裏切りで死なせてしまったことへの後悔から逃れることができなかった白田は これですこし肩の荷が降りたのかな、と思いました。
世間を騒がせた大事件は 若者一人の手によって起きていたとは
事件当時の三億円って 現在の20億円ぐらいの価値になるそうです。
金額の多さにマスコミも テレビで取り上げたり 映画やドラマになったり 本が何冊も出ています。
そんな事件が たった一人のはたち前の青年が犯人だったとは。
この事件について 本やテレビを観てなかったのでとても新鮮に読みました。事件は1968年12月に起きました。大学では学生闘争が激しかった頃でしょうか?
大学を辞めて無為な日々を過ごすにはエネルギーが有り余っていて 生きる目標を見失っていた白田たちは情熱を向ける場を求め、三億円事件の計画を練ることにやりがいを見出していたようです。
決して 大金が欲しかったわけではなく。
胸にズシンと来る作品
真実か虚構か。
信じるか信じないか。
どちらにしても 最後の親友の死によって 鉛玉を飲み込んだような気分になります。
親友の死と3億円は等価だったのか???
それにしてもこの本 刊行が2018年12月10日、奇しくも 事件から丁度50年にあたります。意味ありげ。
先へ先へと興味が湧いて あっという間に読み終えてしまいました。