イヤミスの女王・湊かなえさんの『母性』を読みました。
2023年16冊目。
戸田恵梨香さん、永野芽郁さんで映画化され昨年公開されて話題になりました。
映画化もされている作品、ということは、描きたくなる内容、もしくは問題提起性のある内容なのだろうとは思っていました。
Amazon ★4.1 ★5=48%
⚠️ネタバレあります、ご注意ください
主人公と親子関係にある女性たちが描かれています。
主人公のルミ子と母、 ルミ子の娘・清佳。
この関係が一般的ではない。
義母、義母の娘…女性の登場人物はほとんどが嫌な人。
ルミ子の一人娘の清佳が、中庭で倒れていました
事故か、自死か、事件か。
一体何があったのか… 冒頭から引き込まれました。
かなり読むのがしんどいストーリーでした
母親・ルミ子と、娘・清佳の思いはすれ違い。
何故、娘は、自分の愛を受け入れないのか、と母は思い
何故、母は自分を愛してくれないのか、と娘は思う。
2人の手記が交互に記され、同じ出来事も、それぞれの立場から見ると全く違って見えているのが興味深いです。
母性とは、母から娘へ、娘から孫へと注がれるものだと思っていたけれど
主人公のルミ子は、自分と自分の母親との関係が理想で、過去に囚われています。
自分が母親になってもまだ「母の娘」であり続けているのが怖かった…。
ルミ子の夫(清香の父)の存在が希薄
事なかれ主義で、無関心、無責任な清佳の父(ルミ子の夫)に苛立ちます。
そもそも、二人が結婚に至ったのも、ルミ子の母親の意向が働いてます。
無責任な二人から生まれた清佳が気の毒。
毅然と自分の意見を言って家族を守ろうという意思がまるでない父の姿に読んでいて腹立たしさを禁じ得ず。
夫として、父として、もっとうまく立ち回っていたら、こんな不幸せは起きなかったのに、と歯噛みする思いです。。
意地悪で自分勝手な登場人物も然ることながら…
夫の実家に移り住んでからは、夫の家族の言動に耐えるルミ子の様子を読むのが辛いです。
が、ただ耐えるだけでは何も問題は解決しないので、ルミ子の煮えきらない態度を読むのもしんどかったです。
空回りの母としての愛
母に気に入られたいルミ子は、母の思い通りに生きていて、自分の意思がないかのよう。
だから、自分の意見を通す娘・清佳のことが理解できないのです。
自分は、精一杯娘を愛しているつもりでも、それは娘にとっての幸せではなかった。
ルミ子の主観のみ正しいことになっていて、清佳に同情してしまいます。
娘にに自分の価値観を押し付ける母親。
愛とは…娘の幸せを願うこと。
決して自分の都合の押し付けではないはず。
母とはうらはらに、義父母から虐げられている母を見て、母を守ろうとしているのが健気で切ないです。
ひどい母親
家を出た父親に会いに行った清佳。
言い争いと一悶着あり、家に帰ると母が両手を伸ばしてきました。
この期に及んでなお、抱きしめられる、と期待した清佳。
実際は…母は清佳の首に手をかけ殺そうとします。
愛していると、あれほど言っておきながら、娘に手をかける。
信じられない行動。
清佳は母と突き飛ばし、自ら中庭の桜の枝にロープをかけ・・。
清佳はおばあちゃんに助けられました
すんでの所で一命をとりとめた清佳。
最終章では、それぞれ小さな幸せを見つけて暮らしているところが描かれてホッ。
終章 愛の歌で救われました
読むのが苦しいストーリーですが、最後の最後に救いの場があってよかった。
みんなの幸せを願わずにはいられません。
リルケの詩が各章のラストに挿入されているのですが…読み飛ばしましたw