happyの読書ノート

読書感想を記録していこうと思います。 故に 基本ネタバレしております。ご注意ください。 更新は、忘れた頃に やって来る …五七五(^^)

【東野圭吾】不思議な力を持つクスノキと玲斗の成長物語|『クスノキの番人』

東野圭吾さん、ミステリーじゃない作品もいいですね

『ナミヤ雑貨店の奇蹟』に続く新たなエンターテインメント作品。

Amazon ★4.3 ★5=56%

 

あらすじは…

不当な理由で職場を解雇され、その腹いせに罪を犯し逮捕されてしまった玲斗。

同情を買おうと取調官に訴えるが、その甲斐もなく送検、起訴を待つ身となってしまった。そこへ突然弁護士が現れる。依頼人の命令を聞くなら釈放してくれるというのだ。依頼人に心当たりはないが、このままでは間違いなく刑務所だ。そこで賭けに出た玲斗は従うことに。

依頼人の待つ場所へ向かうと、年配の女性が待っていた。千舟と名乗るその女性は驚くことに伯母でもあるというのだ。あまり褒められた生き方をせず、将来の展望もないと言う玲斗に彼女が命令をする。「あなたにしてもらいたいこと――それはクスノキの番人です」と。

引用元:実業之日本社HP

 

 

東野圭吾さんの著作は、ミステリーでありながら、人間讃歌的な温かい視線で描かれていて、目頭が熱くなります。

 

この作品では、「事件」を追う謎解きではない大人のファンタジー的な面白さがありました。

 

両親と早くに死に別れ、祖母と2人暮らしで人生テキトーに生きていた主人公・玲斗が事件を起こしたことで意外な血縁者がいた事が判明します。

 

事件を示談に持ち込むことを条件に、

「クスノキの番人」の任務に当たるように、と玲斗の「伯母」から依頼されたのです。

 

⚠️ネタバレありますご注意ください

 

罪状は住居侵入、器物損壊、窃盗未遂

リサイクル業者のトヨダ工機の豊井社長は、新品なら200万もするレーザー変位計を、何も知らない未亡人から2万円で買い取るようなブラックな男。

 

玲斗は、欠陥商品を売りつけようとする社長に反抗して、客に欠陥があることを漏らしてトヨダ工機を辞めさせられました。

その腹いせに、倉庫かレーザー変位計を盗み出し捕まったというわけ。

 

高校卒業まで同居していた唯一の肉親である祖母の富美が連絡したのか?

 

弁護士・岩本が接見に来ます。

「無事に釈放されたら 命じたいことがある、速やかに私のところに来なさい、

弁護士費用も支払います」という、依頼者からの手紙を携えて。

 

『命じたいこと』は何かわからないまま条件を飲むと…

 

社長と示談成立、あっという間に釈放。

弁護士が

「欠陥のある機械は修理してもまた故障する あいつも同じで所詮は欠陥品。いつかもっと悪いことをして 刑務所に入るだろう」 豊井社長が言ってたよ、と。

 

これからの生き方でその予言が的外れだったことを証明するように、とも。

 

いい加減な気持ちで生きてちゃいけない。

真面目に生きている、それだけで素晴らしいし、未来は拓けてくるのだから。

 

どうせ、親もいないし、大学へ行くお金もなかったんだ…と投げやりになっていた玲斗が人の悩みに向き合ううちに、しっかりと足が地についていく様は読まされます。

 

依頼主は…

血縁のない実業家の伯母さんでした。

 

ヤナッツコーポレーション 顧問・柳澤千舟、60代後半か?

千舟は、一枚の写真を出してきます。

富美ばあちゃん、玲斗の母親・美千恵、祖父・直井宗一の姿がありました。

 

祖父は千舟の父でもあり、玲斗の母と千舟は異母姉妹だそうです。

この関係がわかるまで少し時間がかかりました。

 

祖母・富美は、なぜ玲斗に千舟の存在を教えていなかったのかしら?

柳澤家に迷惑がかかると思ったのか?

 

柳澤家の名に傷がつかないよう、親戚が不祥事を起こしたら当主である千舟に知らせてもらうと言うルールがあったというのに。

玲斗の逮捕で祖母の富美が当主の千舟に連絡、千舟が知り合いの弁護士に示談を依頼して、家名に傷がつくのを未然に防げました。

 

そして千舟から、あなたにしかできないこと=クスノキの番人になることを頼まれました。

 

クスノキの持つ力は、ネタバレしない方が面白い

クスノキにお参りに来る人がいるけれど、それはどういうものなのか、玲斗にはわからず、また誰も教えてはくれません。

 

いつか、自分でわかるようになれ、と言われる玲斗。

 

読者も、クスノキの力を知ろうと、ページがどんどん進みました。

 

佐治寿明と娘の優美を通じてクスノキの力を知ることになります

寿明と兄、兄・喜久夫と母の確執。

佐治家の物語が玲斗の物語と並行して描かれ、胸を掴まれます。

 

今は、物言えぬ身となったお兄さんの思いを弟の寿明(優美の父)は受け止めて…

兄の思いを形にすべく奔走するのでした。

 

解き明かされていくクスノキの秘密と千舟の思い

ホテルチェーンのヤナッツの顧問をしている千舟ですが、解任されようとしていました。

 

周りの社長らが悪いわけではなく、千舟は彼女自身の健康に問題があったからなのですが…

 

正義感に駆られた玲斗は、千舟のために、と役員会で演説を打ったものの…却下。

 

千舟の病状は、柳澤将和には伝えてあり心配はありません。

不安がる千舟を元気づける玲斗。

 

「美千江さんが羨ましい こんな素敵な息子と一緒に暮らせたのだから」

 

最初は、礼儀知らずの物知らずで、人生投げやりになっていた玲斗にこんな褒め言葉が贈られるなんて…^^

 

名演説のおかげで ホテル柳澤閉業は一年延期になり、存続を協議することになりました。

玲斗の熱い思いは、ヤナッツを動かし、創業家の誇りを守れたようです。

 

向き合っているだけでも伝わってくるものがある、と千舟。

差し出した千舟の手を玲斗が両手で包み込むと 彼女の思いが…念が伝わってくる気がするのでした。

 

クスノキの不思議な力と、玲斗の成長物語。

読まされました。