happyの読書ノート

読書感想を記録していこうと思います。 故に 基本ネタバレしております。ご注意ください。 更新は、忘れた頃に やって来る …五七五(^^)

【瀧羽麻子】『うさぎパン』

瀧羽麻子さんの作品は『もどかしいほど静かなオルゴール店』を読んだのが初めてでした。

 

とてもあたたかく穏やかな空気の流れている物語に魅了され、他の作品も読んでみることに。

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瀧羽麻子さんのデビュー作『うさぎパン』を読みました

なんとも可愛らしいタイトル^^

パンダパンはよく見かけるけど うさぎパンは見たことない管理人です。

 

『うさぎパン』は、もともと『虹と観覧車と白いうさぎ』と言うタイトルで書かれ、ダヴィンチ文学大賞を受賞しています。

 

出版にあたり改題されたようです。

 

オルゴール店の2編と同じく、温かでほっこりする作品です

 

211ぺージの軽めの本に2編収められています

もうひとつの『はちみつ』もタイトル通り、ゆったり、優しいお話です。

 

この本は連作短編集というか、スピンオフも掲載の二本立て。

 

『うさぎパン』の主人公・優子の家庭教師の美和ちゃんと
優子の彼氏、富田くんのお父さんが営むパン屋「アトリエ」が共通点。

 

『うさぎパン』あらすじ

高校生の優子は小さい時に母を亡くし、本当の母の記憶がありません。

亡くなった母の事を話す時、優子は「聡子」、と呼び捨てです。

商社マンの父はロンドン赴任中で 優子は後妻のミドリさんと2人暮らし。

 

ミドリさんは優子が聡子(実母)の事を悪く言うとそんなことを言うもんじゃない、とたしなめてくるいい人。

血の繋がりはないけれど、2人の関係は良好で穏やかな日々でした。

 

が!高校に入学したての優子の1学期の成績があまりにも悪く、家庭教師に教わることに。

やってきたのが、美和ちゃん、某有名大で物理を学ぶ大学院生、25歳。

 

中高一貫の女子校から、地域の共学の公立高校に移ってきた優子は馴染めるかドキドキ。

 

自己紹介の時に、何が好きですか?という質問が飛び、とっさに「パン!」と答えると、一人の男子、富田くんが俺も!と手を挙げました。

 

それから二人はパン談義で盛り上がり…お付き合いするまでに。

 

富田くんのお父さんはパン職人だったのです。

 

優子は目が赤いゼリーでできたうさぎパンを食べたい、と富田くんに話すと、お父さんのお店「アトリエ」で試作品を作った、と分けてくれました。

 

富田くん、本当にいい子。^^

 

 

美和ちゃんと村上さん、優子と富田くんのダブルデートも実現して…

 

そんな時、進路の問題から優子と富田くんの関係がギクシャク。

 

美和ちゃんと話しているつもりが…聡子お母さん登場!

まるでイタコのように、美和ちゃんの体を借りて、お母さんがアドバイスしてきます。

 

聡子お母さんは、最後にえぇ〜??というような打ち明け話をするのですが、ネタバレしないほうが面白いので内緒^^

 

これは大どんでん返し!! でした。

 

登場人物がみんな優しくて温かい

それぞれ個性はあるものの、悪人がいないのでほっこりします^^

 

わたしたちの住んでいるこの街は、人口に対してのパン屋・洋菓子の数が日本全国の中でもトップらしい。

《中略》

港町として栄えた昔から、多くの外国人を受け入れて異国の文化を吸収してきた土地だから

出典:『うさぎパン』P34 〜35

 

えっ?神戸のことかな? 

 

著者は芦屋生まれ、西宮市にある神戸女学院卒、京都大学卒。

神戸のことをおっしゃてるのかな〜と思い、ずっと、優子の家は神戸設定で読んでました^^

楽しい。

 

幸せのうさぎのエピソード

クリスマス、美和ちゃんが白いウサギをプレゼントしてくれました。

優子が昔、とっても大切にしていたうさぎ(ミッフィかな?)のぬいぐるみでした。

 

ふいに、母の棺の中にうさぎを入れたのを思い出して…

 

富田くんが「アトリエ」のクリスマスケーキを持ってやってきました。

風邪気味の優子を気遣って、帰る、と言う彼を引き止めて

 

優子は、大切な人の話を富田くんに聞いてもらいたかったのです。

まだ誰にも話してないお母さんの話を。

 

『はちみつ』あらすじ

『うさぎパン』は140ページほどの短い小説なので、文庫本として出版するために、『はちみつ』が書き下ろされ同時に収められたようです。

 

『うさぎパン』に登場する美和ちゃんと、富田くんのお父さんが営むパン屋さん「アトリエ」が登場するスピンオフ小説です。

 

美和の通う大学院の研究室で事務をしている桐子は、失恋の痛手で食欲が無くて…というか、彼との食体験が、トラウマになって、パンを食べられなくなっていました。

 

心配する美和。

 

美和が学会で留守の間、桐子は研究室の先生とご飯を食べていましたが、ある日、二人で高台の公園で食べようと、一緒にでかけました。

 

食べ終わった後、先生がどこかに行っちゃった、と思ったら、とても可愛いお花(雑草)を摘んで「どうぞ」と桐子に差し出す。

ささやかなものだけど、真紅のバラの花束ではないけれど、それに負けないくらい、桐子の胸を感動で震わせてくれました。

 

物静かで仙人とあだ名される先生の心憎いプレゼント。

桐子の視界が涙で歪んでいったのでした…

 

先生が帰り道で、寄っていきましょうか、と連れて行ってくれたのが、別れたシュウとよく行っていた「アトリエ」でした。

 

パンは受け付けないはずだったのに、

「好きなものを食べると元気がでます」という先生の言葉が響いたのか…

ハーブのパンとハーフサイズのバゲットを選んでいました。

ふと見ると、先生も同じチョイス。。

 

ひょっとしてこの二人、うまくいくんじゃないか? ニヤリと深読み^^

 

美和の学会のお土産は、はちみつでした。

 

先生は、瓶の中のひだまりを見つめて神妙に手を合わせて…いただきます、をした。

可愛い〜 先生だけど、なんだかほんわか温かい、それこそひだまりのような人。

 

桐子さんと結ばれたら良いのに^^

 

サクッと読めて、ほんのり温かい気持ちになれる本でした。