⚠️ 基本ネタバレしております。ご注意ください。

辻村深月著「ツナグ」 読了♪

辻村深月著「ツナグ」を読みました。

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10月6日公開の映画「ツナグ」の原作です。
第32回吉川英治文学新人賞受賞作品です。

映画が封切られたこともあってか
2012.10.14 朝日新聞読書欄 売れてる本(文庫版)
「今週の第一位」にランクイン!

たった一人と一度だけ
死者との再開を叶えてくれる人がいるらしい。

あなたなら、誰に会いたいですか?
 (本の帯より)

依頼人と死者との間を取り持つのが「ツナグ」=(使者)
代々 ひとつの家がこの役割を伝えていっているという設定。

本当に存在してたらいいのに・・・と思わせるような
大人のメルヘンです。

ネタばれあります、ご注意ください。




アイドルの心得
長男の心得
親友の心得
待ち人の心得
使者の心得

の5章からなっています。

アイドルの心得では、家族の中でも置き去りにされ
存在感のない女性が
一見派手なアイドル・サヲリに偶然街角で助けられた。
彼女にお礼を言いたい、と。
このサヲリは、亡くなった「飯島愛」さんを
思い起こさせます。(モデルかな?)
彼女と会うことで 依頼人の女性は自分を取り戻すことができたのです。


長男の心得では、母に会って、自分より弟が大切にされていたのでは
という疑念を 晴らすことができ
新しい気持ちで 生きていくことができた男性のお話。

親友の心得は、
親友でもあるが、ライバルでもある2人の女子高生。
未必の故意で、親友を死なせてしまった。
後悔と謝罪を伝えたくてツナグに、会わせてもらったのだが…
結果は…一生十字架を背負って生きていくことになる、
死者からのメッセージが渡されたのでした。
ズシンとくるお話。

待ち人の心得。
同居していた彼女が旅行に出て消息不明に…。
7年間待ち続けた男性のお話。
ちょっと じんわり心が温かくなるお話です。

最終章は、ツナグである 歩美(男子高校生)自身の物語。

歩美と祖母の視点から1~4章の再会が語られます。



祖母は、孫の歩美を後継者にと考えていたが・・・歩美は迷った。

「死者に会うことで、人生を前に進める人たちがいる。
占いに頼るように、自分の生活に彩を与え、心残りを解消する。
それは使者の存在を消費し軽んじるのではないか
どうしようもなく驕ったもののような気がした」から。

見習いで、ツナグを体験して
様々な人生と死者の再開に立ち会うことの大変さを知った歩美。

「…使者って結構しんどいね。単なる傍観者でいいかと思ってたら
こっちにもダメージが来る」

「そうさ。人の人生に立ち会うってのは、
生半可な気持ちじゃできないんだよ」   (本文より)

祖母は、ツナグの役割を息子である歩美の父に継いだが、
ツナグだけに持つことが許された「青銅の鏡の掟」を破ったことにより
父も母も亡くなってしまった。


不幸なことが起きたのは、自分の責任だ、と
自分を責めて生きてきた祖母。
幼いころから 両親の替わりに歩美を守り育ててくれた
歩美が、祖母の仕事=「ツナグ」を引き継ぐことで
祖母の気持ちに応えようと、決意したんですね♪

いよいよ 引き継ぎの儀式。
祖母の掌に置かれた 青銅の鏡の上に
そっと 歩美が手をかざして目を閉じる。

温かいものに包まれ、祝福されたと感じる歩美。


このお話の肝は 最終章、歩美のツナグとしての成長

読後に ほんわか温かい気持ちになれました。[emoji:v-218]

死者は、残された生者のためにいるのだ。

著者のメッセージ。 ナルホド。



*ご参考リンク

辻村深月『ツナグ』|新潮社