新聞広告に出てた呉勝浩さんの「爆弾」。
爆弾魔の悪意に戦慄する、ノンストップ・ミステリー、というフレーズに掴まれて、図書館で検索したところ、4月20日に発売したばかりで、検索結果には上がってこず。
検索結果の一番上に出てたのが、吉田修一著「静かな爆弾」。
吉田修一さんの作品では「ウォーターゲーム」が面白かったし、NHKドラマにもなった「路(ルウ)」も良かったので読んでみることにしました。
内容は、
テレビ局に勤める早川俊平はある日公園で耳の不自由な女性と出会う。音のない世界で暮らす彼女に恋をする俊平だが。「君を守りたいなんて、傲慢なことを思っているわけでもない」「君の苦しみを理解できるとも思えない」「でも」「何もできないかもしれないけど」「そばにいてほしい」。静けさと恋しさとが心をゆさぶる傑作長編。
BOOKデータベースより引用
そこに愛はあるのんか?
主人公・早川俊平が、公園で出会った女性は、耳が聴こえない響子。
この2人の恋愛事情が描かれるのかと思っていましたが、俊平は放送局でドキュメンタリー製作の仕事に忙しく、日本と海外を行き来し、日本にいるときにはスタジオに入り浸って製作に暇がありません。
週に3回、俊平のアパートに来てお料理を作ったり、無音のテレビを観て俊平の帰りを待つ響子への愛情は殆ど感じられず…
響子がいないと寂しいが、いたところで、筆談をしているぐらいで大したコミュニケーションを取っていません。
特に半同棲ぐらいの仲なのに、愛情表現の場面が殆どなく…「仕事が忙しい」の理由でいつも慌ただしく出かけてしまう俊平。
2人でプールに行く場面もありますが、ロッカールームでのホストらの話は会話まで詳しく書いているのに、プールサイドでの俊平の心情描写などは一切なし。
響子を軽んじた後に、反省しているくせに、きちんと筆談なり、メールで謝ったり、誠意のある言葉をかけてないのも納得がいかない…
結婚まで考えている相手と一緒なのに、読んでいてキュンとする場面もないです orz
そもそも、響子とはどんな女性なのか、という細かい描写がないので読んでいても頭の中で像をぼんやりとしか結べなかったです。
バーミヤン遺跡破壊の取材場面は細かく描かれています
タリバンがなぜバーミヤン遺跡を破壊するに至ったの取材を続けて飛び回っている俊平は、活写されています。
著者的に、このテーマが書きやすかったのでしょう。
この本は、俊平の「仕事」と「恋愛」と言う2つの要素で成立っているけれど、私には、作者が「仕事」面に重きを置いているように感じました。
音のない世界に生きる人とのコミュニケーションの難しさ
以前、目の見えない世界に生きる主人公を描いた「闇に香る嘘」を読み、ドキドキハラハラ、最後、涙、という感動作を読みました。
「静かな爆弾」というタイトルで「爆弾」は響子のことなのかしら?と思い
どうなる?どうなる?とページを繰る手が止まらずでしたが、そのまま何も起きないまま、読み切り…
あれ??
拍子抜け。
耳の不自由な人に遠くから呼びかけても聞こえないし、
筆談だと、内容を要約して書いているうちに、感情の高ぶりが落ち着いてくるので、なかなか熱い思いを伝えにくいですね。
そういう、耳の不自由な方との生活だとこんな感じ…と言うのはわかるのだけれど、いま一歩踏み込み足りず、な感じでした。
忙しいを理由にして相手に誠意をみせない人との結婚は失敗する気がする
いつも自分のことを待ってくれていた響子が家に来なくなり、連絡も途絶え、焦る俊平。
その段になって、自分の気持ちに気がついたようですが。
彼女がパスポートを取って、一緒に行くのを楽しみにしていたハワイ旅行も、取材旅行が入ったのでキャンセル。
メモにキャンセルで、と一言。
言われた相手の気持ちも考えず、「忙しい」を免罪符にして優しい一言も書き添えないような男が主人公でがっかり。
聴覚障害者に切り込んだドラマがあるのかと期待もしたけれど、そちらも不発。
総ページ 199ページ、200ページにも満たない、いろいろ軽い本でした。