⚠️ 基本ネタバレしております。ご注意ください。

【中山七里】『夜がどれほど暗くても』|どんでん返しの帝王のパンチ弱め

胸のすく「どんでん返し」がお約束の中山七里さん

中山七里さんの著作は「護られなかった者たちへ」「死にゆく者の祈り」を読みました。

今回が3作目です。

志賀倫成は、大手出版社の雑誌『週刊春潮』の副編集長。スキャンダル記事に自負を持ち、充実した編集者生活を送っていた。しかし大学生の息子・健輔に、ストーカー殺人を犯して自殺したという疑いがかかる。彼の幸福は崩れ去り、取材対象からも罵倒される日々に、精神がすり潰されていく。だが被害者遺族である奈々美と出会い……。圧倒的筆致で真実と愛を描く、傑作ミステリ登場。

引用元:角川春樹事務所HP

 

⚠️ネタバレあります、ご注意ください

 

 

ゴシップ週刊誌の編集部

週刊春潮の編集長・鳥飼は、敏腕で…ちょっと傲慢。

週間春潮を政治と健康ネタの雑誌から、芸能ネタに舵を切りました。

 

社会悪をくじくネタより芸能ネタの週の方が売れるのは…

読者の助平根性と嫉妬心と偽善に応えているからだ!と言い切ります。

 

副編集長の志賀は、この仕事にやり甲斐を感じていて、部下の井波に発破をかけてスキャンダルを追わせていました。

 

そこへ、志賀の一人息子がストーカー殺人の末、自殺。

 

立場逆転!

取材する側とされる側。

今まで、取材する側で高いところからグイグイ攻めていた志賀が、今度は、殺人犯の父親として取材される側になりました。

 

オセロの駒が白から一斉に黒に変わった、そんな印象です。

 

カメラやマイクが容赦なく突きつけられ、中にはマスコミ関係の顔見知りもいて、

早速、加害者の父は週刊春潮の副編集長、と身バレしてしまいます。

 

今まで強引に取材をし、取材される側の人権なんかしるものか、ぐらいの勢いでしたが、いざ我が身に降りかかるとこんなに辛いものなのか…

 

以前読んだ、一穂ミチ著『砂嵐に星屑』は在阪放送局が舞台の短編集でしたが、

その中で、

ニュースデスクの中島は、「人様の不幸でメシを食ってる分際」とマスコミの世界に身を置く自分を皮肉っていました。

 

仕事一筋で息子のことを何も知らない自分に愕然

一昔、二昔前の世の中は、夫は会社で仕事をして家族のために稼いでいればOK、な会社員が溢れていました。

 

家のこと、子供のことは妻任せ。

志賀もそんな1人でしたから、いざ息子が亡くなった、と聞いても

彼の中に、息子の実像を結べないんですね…

息子との思い出もないし、ろくに会話もしていないから、息子のひととなりもあやふや。

失って初めて、その存在の貴重さに気づくけれどもう遅い。

 

残された被害者の娘

志賀夫妻が夜道を歩いていると、少女がカッターナイフをもって襲いかかって来ました。

亡くなった、文科省の高官・星野隆一を父に、大学講師・星野希久子を母に持つ娘・奈々美でした。

彼女には親戚もなく、一人ぼっちで事件のあった家に住んでいました。

憎しみのすべてをぶつけてくるのでした。

 

加害者の家族もまた、被害者、という一面があります。

志賀は、ネットで見かけた

NPO法人「葵の会」=犯罪被害者家族のみならず加害者の家族の精神ケアをサポート

 

加害者家族に対する誹謗中傷はインターネット社会で拡大

プライバシーをあばくことが正義というまちがった風潮のせいで、加害者家族もまた苦しんでいます。

これだ!と見学に行き、ディスカッションを見学して、志賀が入会を決意したとき…

遅れて入ってきた女性が。

奈々美でした、そして 志賀の姿を見て激昂するのでした。

 

一条の光

志賀の息子・健輔の葬儀の際に、大学の友人だという喜納みちるが声をかけてきました。

健輔くんが、犯人だなんて、私、信じられない、と言います。

本当に息子が殺したのだろうか?と言う疑問が拭い去れない志賀。

 

捜査一課の刑事・葛城は、被疑者死亡で送検しただけ、といいます。

捜査は秘密裏にまだ続いているようでした。

健輔の事件に疑問点があるなら、もしかしたら…?

 

桜中学の裏サイトで「奈々美」を検索すると…

奈々美はヘイトの対象になっていました。

守らねば、と彼女の通う中学近くで見張っていると

絡まれている奈々美に遭遇、助けようと止めに入って、奈々美の同級生に鼻を折られ、肋骨にはヒビ。

 

落ちこぼれの男子学生が学校帰りに再び奈々美を襲っているのを見て

志賀が身を挺して守ろうと頑張ったら、再び顔面強打で出血…

あまりの惨状に、学生たちは逃げ帰りました。

 

暴力を殺ぐための暴力は不要、と無抵抗でヤラれっぱなしだったのです。

 

志賀倫成、動く!

いくら息子のことを知らないとは言え、健輔は殺人を犯すような人間ではない。

息子の名誉回復のために出来ることはないか?

 

「人間の情報は生活圏の中に集中している」という葛城刑事のヒントをもとに、健輔が通っていた大学に向かい、同じゼミだった生徒たちに集まってもらい話を聞きました。

 

健輔は在学していた東朋大で青年心理学を専攻していました。

 

ゼミは堂前先生が引き継いでいる、と事務方が生徒を集めてくれました。

 

久石三鈴、桐野慎、陳修然(ちぇんしうらん)は好意的。

橋詰朋美は悪意があるような態度。

 

邦画倶楽部 喜納みちる 

たった一度一緒に見た邦画『鬼神 阿修羅丸』で邦画を好きになった、と健輔が言っていたと教えられ…

冷淡で無関心な父親だったなぜもっとかまってやらなかったのかと後悔。

 

家庭を顧みず、仕事さえしていればいいのだと高をくくっていた罰だ。

他人が隠したがっている恥部を暴き立て、醜聞を商品にした罰 

出典:『夜がどれほど暗くても』P250

 

自分は仕事に逃げ込んでいたのではないか。

自問して悔やみます、もう息子は帰っては来ないから。

 

⚠️この先、重要なネタバレあります

 

 

 

 

犯人は…

眠ろうとしたところに 奈々美から火事、と連絡が入りました。

奈々未を身を挺して守った

 

放火したのは、星野ゼミの留学生・陳修然。

 

新聞配達をしていて、旅行のため新聞を止めた星野家が留守だと知り…

金目当てで星野宅に合鍵を使って入ると、飛行機が欠航になって自宅にいた二人と鉢合わせ、たまたま近くにいた健輔も巻き込んで3人を殺したのでした。

陳逮捕。 

 

安易過ぎはしないか?

住むところがなくなった奈々美は志賀の誘いで、志賀の家で同居することに。

志賀は、将来は養子縁組も視野にいれています。

健輔の嫌疑は晴れ、各メディアが事件の真相をトップニュースで伝えました。

 

ずっと実家に帰ったままだった妻の鞠子が自宅の1006号室のドアの前に立っていました…

 

壊れかけた夫婦の絆がもとに戻って、健輔の代りに奈々美と3人で???

 

いつもの冴えがないどんでん返し

犯人は、ほとんどストーリーに絡まずちょっと出てきただけなので、彼が犯人でした、と言われても、はぁ…そうなんですね、と鈍い反応しか出来ない。

 

えぇ〜〜〜〜!この人がっ??なサプライズなし。

 

約300ページある本作の240ページあたりで登場するぐらいで、なんだか取って付けた感があります。

犯人の人物像についての描き込みも足りないし。

 

読みどころは、取材する側からされる側へ180°人生が変わった志賀の人生と、

仕事ばかりで家庭を顧みなかった悔恨。

そして、週刊誌・雑誌社の内情…ですね。

 

巻末に漫画家・西原理恵子さんの感想漫画が載っているのですが…笑ったw

 

「幸い健輔の嫌疑がはれたので」 

このすべてを一瞬で閉店にする急ぎ働き文に深く感銘いたしました。

                          西原理恵子

 

確かに。

今回の『夜がどれほど暗くても』の後半は、「やっつけ仕事」味ありました ^^;