2017年本屋大賞3位の「罪の声」を読みました。
画像は講談社BOOK倶楽部より
図書館に返す前に写真撮り忘れた~
*「週刊文春」ミステリーベスト10 2016国内部門第1位
*第7回山田風太郎賞受賞
と話題になった作品です。
それもそのはず、昭和の未解決大事件グリコ・森永事件を題材に取っていて、著者は学生時代から この事件についていつか書きたいと思ってたいただけあって 沢山の資料を読みこなして書かれています。
著者が新聞記者だったことも 作品を確かなものにしていると思いました。 事件の犯人にも 被害者にも家族がいる、という視点。
著者がテレビでグリコ・森永事件の番組を観ていた時に「じょーなんぐーの…」というテープの声が流れました。この子供は自分と同世代なのでは?? 今どうしているのか、と犯人にも家族がいる、という事を書いてみたくなった、と塩田武士さんの談。
ネタバレあります、ご注意ください。
中を確かめると カセットテープと黒革の手帖。カセットテープを古いカセットレコーダーで再生してみると
ギンガ・萬堂事件の犯人グループが現金の受け渡し場所を支持するために使った 幼い男の子の声が流れてきます。
これは…自分の声ではないか??
そこから 父の友人を頼り真実を手繰り寄せ 自分と事件の関係を知ろうと過去に踏み込んでいきます。真実がわかることで自分の平和な日常を失うかも知れないという恐怖と闘いながらも 知っておかなければならないという一途な思いで。
一方 新聞記者の阿久津も年末企画にギンガ・萬堂事件を洗い直す作業をしていました…
実話とフィクションが上手く混じって 物語に引き込まれました テープには幼い男の子の声のものと 男の子と女の子の声の2種があり、幼い男の子声が俊也のものでした。
俊也は父のテーラーを継いで 何も知らずに育ちましたが
一方の もう一つのテープの声の子どもたち(姉弟)は過酷な運命を歩みました。
これはフィクションなのに一瞬そうなのだ、と 事件関係者の職業やその後も 引き込まれすぎてリアルすぎて どこまでが作者の創作でどこからが事実なのかわからなくなるほどです。 犯罪者家族への思い
犯罪には 加害者と被害者がいて 犯罪動機などが注目されます。加害者と被害者には 何の罪もない家族がいる、ということ。その家族も苦しみを背負って生きなければならないのですね。
我が子を犯罪に巻き込んだ親たち、巻き込まれた子供のその後の運命もこの作品に描かれていますが、実際 あのテープの子どもたちは 大人になってこの現代に生きているのです。
この作品が出版されたことをどのような思いで見ているのでしょうか。
「あれって ◯◯ちゃんの声じゃない?」と学校で噂になったかも知れません。
息を潜めるように生きているのか 子供だった自分は悪くない、と普通の生活を送っているのか。
あの事件のテープが特番なので流れるたびに 吹き込んだ時の事を思い出して 自分の親があの大事件の犯人だったのだ、と背筋が凍るような思いをしているのではないかと お察ししてしまいます。
読み応えのある一冊でした。
おすすめです!
【2019.8.31 追記】
週刊文春 ミステリーベスト10 2016年 第一位
第7回 山田風太郎賞 受賞
台14回 本屋大賞 第3位
2020年 全国東宝系で映画公開 小栗旬 星野源