何の本だったか忘れましたが、Amazonで本を検索していた時に、こちらもおススメとして、藤岡陽子さんの作品がいくつか紹介されていました。
図書館に予約した本は当分届きそうにないので、書架にある藤岡陽子さんの本を借りてきました。
それが『きのうのオレンジ』です。
初めて読む作家さん。
Amazon★4.2 ★5=52%
集英社のHPには
全国の書店員100名が心震わせた感動作!とあります。
わかる〜!
藤岡陽子さんの『きのうのオレンジ』(集英社)は一次投票では11位だった。
10位の加藤シゲアキさんの『オルタネート』(新潮社)は66点、『きのうのオレンジ』64.5点で本当に惜しい点数差だった。
引用元:WEB本の雑誌 横丁カフェ
もし、この作品が10位以内に入っていたら…2次投票でもしかしたら…もしかしたかも?
そのぐらい、胸に迫るストーリーでした。
残念すぎる…
大賞 52ヘルツのクジラたち: 町田そのこ
2位 お探し物は図書室まで :青山美智子
3位 犬がいた季節 :伊吹有喜
4位 逆ソクラテス :伊坂幸太郎
5位 自転しながら公転する :山本文緒
6位 八月の銀の雪 :伊与原新
7位 滅びの前のシャングリラ :凪良ゆう
8位 オルタネート:加藤シゲアキ
9位 推し、燃ゆ :宇佐見りん
10位 この本を盗むものは: 深緑野分
ノミネート作品の半分しか読めてないわ…
「52ヘルツのクジラたち」は胸を絞られる思いで読んだ感動作でした。
2位も3位もよかったけど…
ワタクシ個人的には、『きのうのオレンジ』は大賞に匹敵するすばらしい作品だと思いました。
⚠️ネタバレあります、未読の方はご注意ください
主人公は笹本遼賀、33歳。
五反田のイタリア料理店で店長をしています。
大学病院に検査結果を聞きに来た場面から始まります。
故郷・岡山の高校で同じクラスだった矢田泉が看護師として働いていて再会。
遼賀の検査結果は「悪性腫瘍」でした。
遼賀の闘病、双子のような弟・恭平との関係、両親とのこと、
高校の同級生で看護師の矢田、イタリアンレストランのバイトの高那…
誰もが温かくて…
何度も泣かされました。
特に終盤は号泣レベルに泣かされるので、電車の中で読まないほうがいいです。
心置きなく泣けるところで読むべし。
『きのうのオレンジ』表紙絵は、根底にあるエピソードから
二人の男性が雪山で歩いている姿が描かれています。
ひとりはブルーの靴、ひとりはオレンジ色の靴。
15歳の冬、二人は父に連れられて、岡山と鳥取の県境にある那岐山に冬山登山に出かけ、兄弟は滑落してしまいました。
遭難した一夜のことは、作品の根底にあって、何度となく思い出として語られます。
雪の中、凍える手で遼賀が張ったテントでビバークした二人
弟思いの遼賀は、滑落で足を痛めた弟・恭平に自分の乾いたオレンジの靴と、恭平が濡らしてしまった青い靴を交換してあげます。
厳寒の冬山で濡れた靴を履いていた遼賀の両足は凍傷になり、切断は免れたものの白ろう化して変形してしまいました。
野球で頭角を現した恭平に両親は土日もつきっきりで試合の応援に忙しい。
そんな日々も文句も言わず、気持ちよく送り出して留守番をする遼賀が健気で愛おしいです。
いつも困った人にはそっと寄り添っている優しい性格。
命を見つめる描写がうまいのは、藤岡陽子さんが現役の看護師だから
著者の藤岡陽子さんは、大学卒業後新聞社勤務を経て、タンザニアの大学に留学!!(スワヒリ語で学ばれたそうです)
帰国して結婚、出産、30歳で看護学校に入学、38歳の時に小説家デビュー。
子育てしながら、2020年時点で脳外科クリニックに勤務しつつ本を執筆されているそうです、すごいバイタリティです!
看護師をされているからか、患者さん、患者さんのご家族、様々な例を見てこられたことが小説に生きているのだと思いました。
末期癌患者さんの心理をリアルに描く著者。
「今の気持ちを言葉にすれば 虚しい 惨め 情けない その3つを足してもまだ足りないくらいのやるせなさで遼賀の気持ちは沈んでいた。」(P239 より)
「家族には見せられない重くて暗くてやり場のない感情を矢田は受け止めてくれた。
どれほどその存在に救われてきただろう」(P249より)
気遣われることが辛い、でも誰かの助けなしには生活できない、そんなもどかしさを抱える遼賀でした。
双子として育った遼賀と恭平
遼賀は4月生まれ、恭平は3月生まれ、同学年だったので周囲の人達は2人は双子だと思っています。
遼賀の母と恭平の母が双子で、恭平の母は恭平が3歳の時に亡くなってしまいました。(もともと父が誰かわからない状態)
遼賀の母が、双子妹の子=恭平を引き取ったので二人は双子の兄弟のように育ちました。
恭平はある日、祖母の家の仏壇の引き出しから自分の母子手帳を見つけました。
見知らぬ女性の名前が母親欄に記載されていて…
遼賀に相談して、自分は「なにも知らなかったことにして」これからも、お父さんお母さん、遼賀と4人家族でいたい…とそれまで以上に両親に感謝し、期待に応えようと生きていきました。
家族は、血が繋がってるとか、同じ屋根の下で暮らしてるから、家族なのではなく
互いに思いあって良き家族として共に生きる、と言う気持ちがないとバラバラになってしまうもの。
恭平は、ずっとしっかり者の遼賀に甘え、慕い、
遭難した日からますます二人の絆は強くなっていったのでしょう。
自分の代わりに濡れた靴を履いて凍傷になった遼賀に申し訳なく思いつつ言えなかった「ごめん」を遼賀の死を前に言えて良かったね。
遭難した夜、二人は両親に向けて、地図の裏に手紙を書きました。
若き日に死を覚悟して書いた2人の手紙が最後の登山で紹介されてボロ泣き!
元気をもらいに恭平、バイトの高那、看護師の矢田と15歳の時に遭難した那岐山へ登り、そこで20代から40年、山の捜索隊員をしていた男性と出会います。
彼は、当時の二人の遭難のことを覚えていて、
パニックで錯乱状態になる若者の亡骸を何体も見てきたが、弱冠15歳にして雪山で冷静な判断をした二人を褒めてくれるのでした…
また泣いてしまう!
おとなしい遼賀を犠牲にしていたのでは? もっと構ってあげるべきだった、との母の後悔と反省を読んでさらに号泣。
本屋大賞候補には入らずでしたが、感動作!
オレンジって…果物のオレンジではないです。
遼賀の優しさの象徴、雪山で恭平と交換してあげた遼賀の登山靴の色。
読み終わった後に、本を閉じたら、表紙絵の意味が強く胸に迫り…
また泣ける。
読み終わったらしばし放心状態。
おすすめです♪
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