⚠️ 基本ネタバレしております。ご注意ください。

【髙田郁】『ふるさと銀河線』鉄道にまつわる9編がおさめられた短編集

2024年1月1日 神田明神にて撮影


あけましておめでとうございます。

 

いつもご訪問ありがとうございます。

 

読書のペースが遅く、更新頻度が低いこのブログですが、今年も読書記録として綴っていこうと思います。

 

時々覗いていただければ嬉しいです♪

 

さて、読書総括をする前に、2023年、最後に読んだ本の感想を…まずは書き留めておきます。

 

2023年の最後に読んだのは髙田郁著『ふるさと銀河線』。

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ふるさと銀河線というタイトルですが…短編集で2編のみ

北海道ちほく高原鉄道ふるさと銀河線は、北海道の池田町(池)から北見市(北)をつなぐ旧国鉄・池北線を第三セクターの北海道ちほく高原鉄道が引き継いだ路線で、2006年まで「ふるさと銀河線」が営業していました。

『軌道春秋』は集英社YOU COMICSに連載された漫画で、作画は深沢かすみさん、原作は髙田郁さん(当時の漫画原作のペンネームは 川富士立夏)でした。

 

双葉社から、小説化の声がかかり出版されたのがこの本だったんですね。

 

ふるさと銀河線にまつわるお話は2編のみですが、どこかの街の駅や車窓の風景、駅ナカのお蕎麦屋さんなどが舞台のほっこり温かい気持ちになれる短編集です。

 

髙田郁著『ふるさと銀河線』短編集、9編

⚠️ネタバレあります、ご注意ください
 

お弁当ふたつ

今日も、夫の健康のため、塩分控えめのおかずをお弁当に詰める佐和。

夫の上司に差し入れを…と好物のパイを持って会社に行き、受付で夫に繋いでもらおうと名乗ると…3ヶ月も前に夫は退職しているといいます。

 

夫は毎日お弁当を持ってどこに行っているのか?

佐和は自分のお弁当も用意して、夫の後をつけてみると…

車窓家族

線路沿いのアパートに住む老夫婦の部屋の窓にはカーテンがかかっていませんでした。

映画かテレビの映像のように、二人の生活は、通勤通学の乗客には手に取るようにわかります。

ある日、窓が真っ暗で、二人はどうなったのか、と心配する乗客たち。

照明器具が壊れていただけ、とわかるのですが、全く知らない乗客同士、老夫婦のことを心配していたことがわかり、温かい空気が流れていました^^

ムシヤシナイ

私鉄と接続するため乗降客が多いJR大阪環状線のT駅のそば屋が舞台。

鶴橋か天王寺か??

 

駅ナカの蕎麦屋の店主・路男のもとに東京に住む孫が訪ねてきました…と言うか父のもとから逃げてきたようで、「目の前に包丁があると親父を刺しそうな気がして息ができない」

といいます。

自分をコントロールできず殺ってしまうかもしれない、と怯えています。

 

路男は、孫を厨房に招き包丁でとことん葱を刻ませました、包丁は人間を切るものではない、と体に叩き込ませるために

 

駅そばは、立派なお食事ではないけれど、小腹が空いた時に、腹の虫をなだめるための軽食、(腹の)虫養い。

うちの祖母も母もこの言葉をよく使っていました。

京都の方言のようです…

ふるさと銀河線

両親が事故で亡くなり、兄と妹が残りました。

兄は大学を出た後、ふるさと銀河線の運転士になり、妹の保護者です。

 

妹の星子は高校の演劇で賞を取り、将来を嘱望されていますが、ふるさとに残る決意をします…

兄が地元に残ったその思いに応える為だったのでしょうか…

返信

陸別はなにもない所、なにもないからいいのです、旅先からそんなハガキをよこした息子・徹はもう亡くなってしまった。

奥さんと子供を残して…

 

父と母は、かつて息子が旅した陸別に向かいます。

1977年公開の映画『幸福の黄色いハンカチ』に登場する陸別駅は、新しく美しい近代的駅舎に変わってしまっていて、がっかりするのだけれど

 

満天の星を眺めた時に、ふと隣に息子がいるような気がして…

 

「おまえ(息子・徹)もこの星を見たんだな」つぶやく父・瑛一郎。

 

たとえこの世にいなくなっても、同じ思いで繋がっていれる、その事に気づけた夫婦は、もう迷いはなくなるでしょう。

 

雨を聴く午後

かつて自分が暮らしたアパートの軒先に毎日白い靴下が干してありました。

今はどんな人が住んでいるのだろう?

昔つきあっていた恋人に渡していた合鍵がまだ手元にあり、こっそりとトアを開けて忍び込む。

 

駄目〜、これ不法侵入!

 

部屋のものには手を触れないが、部屋の主の暮らしぶりはチェック。

アル中で、夫と別れて暮らしている女性、と判明。

 

1日今日も飲まなかった…そんな日を積み重ねて、大丈夫だった証拠に靴下を軒先に出して、電車で通う夫にメッセージを送っていたのです…

あなたへの伝言

みゆきは商店街の弁当屋で働いています、夫とはお酒のトラブルで別居中。

断酒の会で知り合った素敵なマダムの真紀さんの家族とも交流があります。

 

ある日真紀さんのご主人から「妻が再飲酒しました」との電話。

家に行ってみると部屋の中はものが散乱し、吐瀉物の匂いが充満し、美しかった真紀さんの顔はむくんで、ごうごうといびきをかいて寝ているのを見せられました。

 

飲酒はこんなに家族を苦しめるのだ、覚えておきなさい、とみゆきに諭すご主人。

 

みゆきは、飲まない日を積み重ねて、いつか優しい夫との日々を取り戻そうとがんばっています。

 

思わずみゆきを応援したくなる物語でした。

晩夏光

あら?こんなところにパンジーの芽が出てる…なつ乃は、自分が種を植えたこともすっかり忘れていたことに気づきます。

 

少しずつ少しずつ認知症が進行していく様子が描かれて怖いです。

 

一人息子に、伝えたいことを、まだしっかりしているうちに書き留めておこうと大学ノートに綴っているのですが…

 

そのうちに、この大学ノートはなんだったかしら? ページを開いても自分が書いた内容が理解できない…

怖い〜!

 

大学ノートを読む男性の傍らで、なつ乃は「何を読んでらっしゃるの?」と尋ねます、

行き詰まったら、母が書いたノートを読むんです、と答える男性。

 

「お母様はお幸せね、息子さんにそんなに思ってもらえるなんて。」

 

…って、お〜〜〜い!その男性は、あなたの息子さんなのよ、あなたはとっても幸せなのよ。

 

家族に迷惑をかけたくないから、最後まで体だけじゃなく、心も頭も元気でいなくちゃね、と肝に命じました。

幸福が遠すぎたら

2001年の元旦、年賀状の束にポストカプセル郵便が混じっていました。

1985年のつくば万博の年に出した、タイムカプセルのように、未来に届く郵便。

 

2001年3月3日、京福 嵐山駅で会おう、という友人からの手紙。

 

16年の歳月は、人間を、人間関係をどのように変えているのか、ちょっと心配でもありますが…

 

病を得たり、妻子を亡くしたり、実家の造り酒屋が倒産の危機に瀕していたり…

順風満帆ばかりが人生ではない。

 

寺山修司の「幸福が遠すぎたら」という詩が引用されています。