happyの読書ノート

読書感想を記録していこうと思います。 故に 基本ネタバレしております。ご注意ください。 更新は、忘れた頃に やって来る …五七五(^^)

【本屋大賞】村山早紀著「百貨の魔法」読了♪

2018年本屋大賞 9位の作品
村山早紀著 百貨の魔法を読みました。

百貨の魔法

本の帯には、
「時代の波に抗しきれず、「閉店が近いのでは?」と噂が飛び交う星野百貨店。
エレベーターガール、新人コンシェルジュ、宝飾品売り場のフロアマネージャー、
テナントのスタッフ、創業者の一族らが、それぞれの立場で街の人びとに愛されてきたデパートを守ろうと、
今日も売り場に立ちつづける――。
百貨店で働く人たちと館内に住むと噂される「白い猫」が織りなす、魔法のような物語!


人々の秘めた願いを誘い出す「白い猫」
歴史ある百貨店を守ろうとする人たちの、星の瞬きのような物語」と。

ほとんど備忘録のような感想です。
ネタバレだらけですので ご注意ください。

風早の街の西は商店街 昭和20年8月 空襲で焼き尽くされた風早の街。 
星野百貨店の創業者・星野誠一は 星野呉服店の一人残った子どもで 
戦災孤児として焼け跡で育ち、親族から残された財産と人脈を元手に
百貨店の基礎を作り上げました。

戦後の闇市から商店街復活し 復活の象徴としての百貨店が星野百貨店でした。

星野誠一自らがデザインしたステンドグラスには 朝顔と猫。

朝顔の不屈の生命力が人々の悲願とその実現の象徴にふさわしいからと。
そして 猫は焼け跡にいた子猫に満足なことをしてあげられなかった悔しさを忘れないために。

宇宙を泳ぐ鯨   エレベーターガール 松浦いさな 
4月 フィンランドの市民オーケストラが風早の街にやって来ました。
バイオリニストの少女 サクラ(母親が桜が好きで命名した)が星野百貨店に来ます。
手に持っているのは 半身が焼けたテディベア。
そのテディベアは星野百貨店製で サクラの名前と生まれた時の身長体重が刺繍された
世界に一つのもの。
サクラはそのテディのリペアを頼みに来たのでした。

百貨店は品物に責任を持ち 壊れた品物の修理などは長い年月を経てもひきうける、
それが その店の包装紙に包まれて手渡される品々への 
愛情とプライド。商品に責任を持つということ。
著者の文章が巧いので これだけでも目頭が熱くなります。

10歳の誕生日プレゼントであり 母の形見の品。
奔放に生きた母は娘に手渡すこと無く持っていて客船の火事で亡くなってしまいました。
ずっと 母に愛されていないと思っていたサクラでしたが

「ベアの胸元にハート型のシルバーのプレートが埋め込まれている。
親子の名前と 生涯の幸福を祈る言葉が刻まれている。
ベアのグラスアイを取り替えたり 外側を新しいものに取り替えることがあっても、
この心臓だけは 
贈った人の 贈ろうと思った時の気持ちと共に永遠にベアの胸の奥にある。


ハイ、涙腺崩壊~~~


シンデレラの階段 百田靴店 百田咲子 

高校時代 友人たちとブルーペガサスというバンドを組み
「シンデレラウィング」という曲でステージに立って歌ったこともある咲子は
卒業と同時に夢を諦め 実家の靴店を継ぎました。

大好きだった母の城のようなお店。
星野百貨店のテナントとして入っています。

アクシデントで最後のステージに立てなかった悔しさを抱えていました。
もう一度歌いたい
そんな夢を「魔法の猫」は 一時の眠りの中で叶えてくれたようです。

謎のコンシェルジェ・芹沢結子の靴を見立てた時
彼女の足はバレリーナの足の様に変形していて… 伏線となります。


夏の木馬  宝飾サロン 佐藤健吾

幼い頃 母と二人できた屋上の回転木馬が好きだった健吾。
ある日 母はソフトクリームを握らせ ここで待っててねと 人並みのなかに消え
二度と戻ってこなかった。
大人になっても あの時の約束どおり ずっとここ星野百貨店で働き
母を待っている健吾のドラマは 読まされました。

星野百貨店の5つの誓い
焼け跡に咲いた蒼い野の朝顔のマークとともにある、

一、私たちは文化を発信し 人類の幸福に寄与できる百貨店であることを誓います。
からはじまる5項は胸を熱くし 涙が。。。

精霊の鏡 資料室 早乙女一花、化粧品アドバイザー 豊見城みほ

資料室の一花は 昔雑誌のコンクールに 風早の空に赤い風船が飛んで行く絵を描いて
佳作になりました。
その時 大賞を取ったのが 一花と年の変わらない少年だったことに驚き 
自分に失望してしまったのです。

ある時 著名なイラストレーターのTorinekoさんが資料室を訪れ

「ぼく、当時、思ったんです、この絵を描いた人は、この風景を本当に愛しているんだろうなって。
だから、この絵はあったかくて 懐かしいんだろうなって。
これは、なんていうのか、心のふるさとの絵だと思いました」と
あこがれの人が自分の絵をこんなに評価してくれていたなんて…

実はその Torinekoさんが あの時 大賞を取った少年だったことがわかります。

一花と共に、涙ダー

それまで 自分は化粧もせずにいたけれど Torinekoさんと花火を観ることになり
化粧品アドバイザーの豊見城みほに手ほどきを受けます。

見たくないからと真実から目をそらせば、その中にある美しさを見つけることができないんです。
あなたは鏡を見ないことで、自分の持っているものの価値から目をそらしていたんですよ
。」
真理である。

夢は 高校生のときからずっと、あなたに会いたかったんです。
あなたの絵を雑誌で見たその日から、できれば友達になりたかった。それが僕の夢でした。 」
と 憧れのTorinekoさんが 一花に告白。 ここはちょっと話が出来杉君w

人を幸せな気持ちにする、
笑顔がいちばんの魔法なのよ

「そう 百貨店は魔法の舞台。お客様を笑顔にーーー幸せにするための場所なのよ」
母のゆりえもそう言っていましたっけ…

<幕間> ベッドに横たわる誠一の側に コンシェルジェ・芹沢結子


<終幕> 結子の生い立ち 百貨店とのつながり が語られます。
結子は誠一の息子・太郎の 別れた妻の娘 つまり 孫だったのです。
バレリーナとしてヨーロッパで活躍するも 足を痛めて引退し
祖父の百貨店の窮地を救うべく 帰国したのでした。

店旗を掲げると 星野の頭文字Hと朝顔の図。
星野のHであると共に 平和西商店街のH
haert 、hope、healing、 homeの頭文字でもあります。
企業理念も素晴らしいね!

終幕で、すべての伏線がみごとに回収されていきます。

コンシェルジュは
その店のホスピタリティの象徴、 魂、 精霊のようなもの。

創業者 誠一が孫の結子に聞かせる言葉が素敵です☆

「おじいちゃんは「偉いひと」になってしまった。
耳に優しいことを聞かせてくれる人はいても
大切なことを教えてくれる人はいない。
大事なことを忘れていても叱ってくれる人はいないから、
自分で忘れないように気をつけなくてはいけないんだよ」

ここらあたりで また涙 だー

時代の流れの中で忘れ去られる、マッチのような小さな明かりでも 
誰かの手のひらを温めることが出来たらーーそんな人生が送れたらと思うんだよ。

こんな 素敵な創業者の心が息づく星野百貨店。

街の中に根付き 人の思い出と共にある老舗百貨店
大手グループの傘下にも入らず独自の経営理念を守り続けようと頑張っていました。

今際の際にある祖父が気がかりながら 年末商戦で忙しく働く結子の元に
おじいちゃんが 少年になって会いに来ました。

百貨店を結子に託したよ、と言って
天高くスキップして駆け上っていったのを 
ガラス張りのゴンドラの中で
エレベーターガールのいさなは見送ったのでした。

オッドアイの魔法の白い子猫は 見た人の願いを叶えてくれる…
そんな 可愛いエピソードも交えながら

心がじんわり温かくなる言葉に満ち溢れた小説でした。
本屋大賞にノミネートされるのも 納得。
お勧めです!

お客様の笑顔のために…と奔走する百貨店の店員さん。素敵です♪

腰は低いが 誇りは高い! 

以前読んだ「上流階級」にも似た面白さがありました。
百貨店の見方が少し変わりました。^^