⚠️ 基本ネタバレしております。ご注意ください。

【直木賞受賞】ラスト3ページに泣いた、『八月の御所グラウンド』

第170回、直木賞受賞、万城目学著『八月の御所グラウンド』を読みました。

 

全くの予習なし、でしたが、登場人物のキャラが立っていることと、馴染のある京都の風景が描かれているのでとても読みやすかったです。

 

暑さが厳しい京都の、八月の御所グラウンドで何が行われるのか、というと

「たまひで杯」なる野球大会。

 

6チームで一番成績のよかったチームのチームリーダーに最高の栄誉として与えられるのは…

 

 

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祇園のたまひでママのほっぺにちゅう??w

御所グラウンドで行われる野球のシーンは眼の前にありありと…

京都大学法学部の4回生、朽木が、友人の多聞の焼き肉を奢ってやる、の言葉に釣られ、ホイホイ出かけていくと…

野球のチームに入れ、と言われます。

 

卒業の危機にある多聞は、三福教授との取引?で、簡単な卒論のテーマをもらって卒業させてもらう代わりに

「たまひで杯」という野球大会で優勝すること、という厳命を受けました。

 

他のチームは、というと、実業団というほどでもない、京都の企業の小さな野球チームで、野球経験者がいる程度。

 

三福研究室は、「卒業」をかけて頑張る多聞と、研究室のメンバー、中学時代からの友人の朽木(くちき)。

 

そして、飛び入りで参加してくれた、通りすがりのえーちゃん、遠藤くん、山下くん。

 

猛暑日の日中の外出は、熱中症のリスクが高まると言われており、12~16時が最も危険な時間帯。

高野連は今年から夏の甲子園は2部制を導入し、第1試合は午前8時から、第3試合は午後5時から、と発表するほど。

 

「たまひで杯」は朝6時にプレイボール!

 

チーム三福のメンバーの草野球的試合の様子が目にありありと浮かんで読んでいてとても楽しいです。

 

チーム三福には、フォアボールで3塁に向かって走り出してしまう中国人留学生のシャオさんという女性もいて、決して強くはないメンバーが揃っていました。

 

⚠️ 以下ネタバレあります、ご注意ください。

 

 

助っ人は、スマホを持たない3人組

通りすがりの、工場で作業員をしているというえーちゃんと、仲間の遠藤くん、山下くんも加わって、なんとかギリギリで9人揃う、という状態で第2戦、第3戦を戦っていきます。

 

この、3人、今どきスマホを持っていないとは?と

ここらあたりで、ピンと来るのですが…

 

えーちゃん、と聞いただけで、野球に詳しい方はピンと来られたかもしれません。

 

日本のプロ野球は成立するのに、中国ではプロスポーツが発展しないのはなぜか、をさぐり、

日本のプロスポーツ史を研究しているシャオさん。

 

朽木とランチを食べている時に、タブレットの白黒写真に彩色をほどこした一人の男性の写真を見せてきます。

 

えーちゃんに似ていないか、と。

 

写真の人物は、読売巨人軍、初のエースで、優秀な投手に与えられる沢村賞の賞の名前にもなっている沢村栄治、その人でした。

背番号14は日本のプロ野球で永久欠番になっています。

 

沢村賞が投手に与えられる賞だと知ってはいましたが、沢村栄治が巨人軍に所属していて、そのまま長嶋茂雄さんのように華々しく引退されたのだと勝手に思っていたのですが…

 

1944年に招集され、乗船していたフィリピンに向かう軍隊輸送船撃沈により戦死

知らなかった…

 

遠藤くんのことも、シャオさんの執念深い?w調査の結果、京大に在籍していて戦死した若者だと判明します。

 

山下くんも若くして亡くなった…なんと、たまひでママの年の離れた腹違いのお兄さん、とわかります。

 

彼らは、毎年お盆に京都に帰ってくるようです。

 

学徒出陣は、神宮外苑で行われた、と雨の中、行進する学生さんたちを白黒映像で何度か観ました。

何度見ても、胸が苦しくなります。

日本中から学生が集まっていたのか、と勝手に思い込んでいましたが、京大生は、京大農学部グラウンド(G)で行われたそうで、

朽木はお盆に農学部Gを歩くシーンが描かれています。

 

えーちゃんら3人は、戦争で命を落としてしまったけれど、もっと野球をやりたかった…

 

だから、毎年、お盆の頃に行われる「たまひで杯」にえーちゃんたち3人が参加する…

そのことを、三福教授は知っていたようです^^

 

五山の送り火を見に建勲神社へ、ここの件は泣けました

終盤、今までのもろもろ伏線回収というか、小さな謎が一気に解けていきます。

 

戦争の名のもとに、若い命が失われていきました。

まだまだ生きたい、やり残したことがいっぱいある、たくさんの時間が残っていたはずなのに。

 

人生で一番キラキラしていた青春の1ページが乱暴に破り捨てられた感じ。

 

えーちゃんたちは、お盆に野球をしに帰ってくるのでしょう。

 

五山の送り火がよく見える、という建勲神社での朽木と多聞のやりとりに目頭が熱くなりました。

 

「みんなーー、生きたかっただろうなあ」

「なあ、朽木。俺たち、ちゃんと生きてるか?」

          (出典:八月の御所グラウンド P203)

 

五山の送り火は、2024年8月16日金曜日 20:00

 

今日やん!! 💡

ナイスタイミングでこの作品に出会い、読めたことに感謝!!

 

『八月の御所グラウンド』は、2023年8月3日発売。

 

八月に、お盆前に、読んでほしい、という意図でしょうね。

久しぶりの万城目学さん作品、心に響きました、堪能しました!

 

直木賞受賞、納得の感動作!

短い作品(142ページ)、コンパクトなのに感動させられました…お見事です!

 

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