happyの読書ノート

読書感想を記録していこうと思います。 故に 基本ネタバレしております。ご注意ください。 更新は、忘れた頃に やって来る …五七五(^^)

【芥川賞受賞・本屋大賞ノミネート作品】宇佐見りん著「推し、燃ゆ」、ヅカファンとして共感する部分あり♪

本屋大賞ノミネート作は好きだけど、芥川賞は感動薄め

当ブログでは、本屋大賞ノミネート作品、直木賞受賞作品の感想記事が多いです。

 

毎年発表になる芥川賞ですが、これまでに4冊しか読んでないです。

 

150回(2013年下半期)    小山田浩子      穴

146回(2011年下半期)    田中慎弥       共喰い

141回(2009年上半期)    磯崎憲一郎      終の住処

77回(1977年上半期)      池田満寿夫      エーゲ海に捧ぐ

 

久しぶりの芥川賞受賞作、読んでみました。

本屋大賞ノミネート作品でもあります。(第9位)

f:id:kokoro-aozora:20210928181004j:plain

推しのいる生活をしたことがあれば頷けて面白い!

「推しが、燃えた。」

小説の冒頭は、読者の心を掴むかどうかの勝負の分かれ目ですが…

この印象的な短文が、ぐっと迫ってきて 物語に引きずり込まれました。

 

燃えた、は、もちろん燃焼することではなく、ネットでの炎上を言います。

アイドルの上野真幸が、ファンを殴った。

またたく間にネットで拡散され、多くのコメントがスマホの中で増殖していくのをただ見守るあかりでした。。

 

私は、主人公のあかり同様、宝塚歌劇団に推し(宝塚では贔屓と言います)がいますし、贔屓だけでなく、作品そのものにも興味があってすべてをまとめて解釈したいと思っています。

そしてあかり同様、贔屓に対する気持ちをブログに綴っていますから、あかりの行動に、共感する部分が多かったです。

 

アイドルとのかかわり方は十人十色で、推しのすべての行動を信奉する人もいれば、善し悪しがわからないとファンとは言えない、と批評する人もいる。推しを恋愛的に好きで作品には興味がない人、そういった感情はないが推しにリプライを送るなど積極的に触れ合う人、逆に作品だけが好きでスキャンダルなどに一切興味を示さない人、お金を使うことに集中する人、ファン同士の交流が好きな人。

あたしのスタンスは作品も人もまるごと解釈し続けることだった。推しの見る世界を見たかった。

「推し、燃ゆ」P17~18

 

推しのインスタライブを見る、というのも、共通点。親近感~~♪

 

あかりは生きづらさを抱えた高校生

あかりは、なんらかの病気を抱えた高校生。

学校へ行くものの、保健室登校だったり、休みがち。

忘れ物が多く、勉強もできないので劣等感を抱えています。

そんなあかりの唯一の心の支えが、ヴォーカルグループ「まざま座」の上野真幸(うえのまさき)でした。

 

行動の中心が真幸。

真幸に会いたいがために、コンサート費用を稼ぐアルバイトに精を出し…

が、アルバイト先でも、一つのことをするのに時間がかかり、すぐに混乱し、次月の予定を出すのも忘れて バイト先の雇用主の幸代さんの温情に頼っていました。

床にいろんなものが散らばった汚部屋を片付けることもなく、真幸のカラーのブルーのインテリアの部屋で「真幸」に逃げこんでいたのです。

 

日常を忘れさせてくれるのが「上野真幸」の存在でした。

ふにゃふにゃのあかりの生活の背骨だったのです。

 

何かとルーズで、人と同じように行動できないあかりは、人知れず悩んでいました。

病名がいくつか付いていたようです。

 

病気があっても頑張っている方もいらっしゃいますが、病気を免罪符に、やる気のないあかり。

病気は、本人しかわからない辛さがあります。

が、両親は、そんなあかりの心に寄り添おうとはしていません。

姉が助け舟を出してくれるのが救いでした。

 

推しが燃えた後に。

推しが燃えて、人気も急降下、そして所属する「まざま座」は解散を決めました。

 

とにかく、あたしは身を削って注ぎ込むしかない、と思った。推すことは、あたしの生きる手立てだった。業だった。最後のライブはあたしが持つ全てをささげようと決めた。

P108

 

推しを推さないあたしは、あたしじゃなかった。推しのいない人生は余生だった。

P112

 

あかりは、「上野真幸の住所特定」のネットの書き込みを元に、郊外の住宅街を歩きました。

ネットで見た真幸のマンションの下でふと見上げたベランダの洗濯物に「推し」のシャツがありました。

みんなのアイドル「上野真幸」ではなく、1人の人間であり 誰かの夫である上野真幸になった、と認めるしかありませんでした。

 

もう、自分の中を貫く背骨がなくなってしまったあかりは…

自分自身への怒り、哀しみが滾って 綿棒ケースを振り上げ、振り下ろします。

 

部屋中に散らばった綿棒を這いつくばって拾う。

これがあたしの生きる姿勢、とあかりは思う。

 

本のラスト。

 

「体は重かった。綿棒をひろった。」完。

 

う~~~~~ん… 

 

何が言いたかったのか? よくわからないまま、読了。

これだから芥川賞受賞作は…orz