happyの読書ノート

読書感想を記録していこうと思います。 故に 基本ネタバレしております。ご注意ください。 更新は、忘れた頃に やって来る …五七五(^^)

小手鞠るい著『天使の子』|実話をベースに書かれた小説

小手鞠るい著『天使の子』を読みました。

 

小説そのものは、とても読みやすく、192ページ

 

前半は恋愛小説の醍醐味、後半は謎解きというか、ミステリー味があって、先へ先へと読まされました。

 

 

この本の内容
愛することは受け入れること――。28歳わたしがアメリカ留学先で出会った底抜けに明るく温かいダニエル。惹かれていく2人だが、彼には秘密があった。愛と性、そして生。衝撃の問題作。

引用元:河出書房新社HP

 

前半はカオリとダニエルの淡い恋のものがたり

アメリカ留学を終えたわたし(カオリ)は、JFKに向かう空港バスの窓から見覚えのあるピックアップトラックを認めました。

もしや、ダニエル?

胸が張り裂けそうになるカオリ。

 

カオリとダニエルの物語とは?

 

冒頭から引き込まれました。

 

カオリは大学の夏休みの3ヶ月間、B&Bの「森の家」で住み込みのアルバイトをしていて、そこでダニエルと知り合いました。

前半は、互いに思っているのに、なかなか進展しないふたりの関係にもどかしい思いを抱きながら読み進めていきます。

 

家族の話題が出た時、ダニエルは、兄や姉とすごしたとても幸せな子供時代を語ってくれました。

 

カオリの家は両親が家庭内離婚状態だったので羨ましい思いで聞いていましたが。

 

あの頃が懐かしい、あの頃と今は繋がっているのか?

あの頃の僕と今の僕は同じ男なのだろうか?

 

ダニエルの言葉から、まだ知らされていない「何か」があることに読者は気づきます。

 

物語のキーマン、ダニエルの姉・クリスティーナ

10月、ダニエルがカオリを家に招いてくれました。

 

姉のクリスティーナは中学2年の時に発症した水頭症が原因で視力をなくし、歩けなくなっていました。

 

28歳の今(カオリと同い年)、クリスティーナは静かに眠っていて、ダニエルに言われ、カオリは彼女をそっと抱きしめました…。

 

年が明けて1月、ダニエルは森の家にピックアップトラックを残して忽然と消えてしまいました。

 

ダニエルの抱えていた秘密は深くて重い

5年も前の事件でレイプの容疑で逮捕されていました。

被害者は…彼の姉・クリスティーナ。

 

ビッグ・ガイと呼ばれるほど大きな体だけれど、優しく温かい人柄のダニエルが??

 

「わたし」は、ダニエルが大好きなのに、彼を信じることができない。

彼によりそい、彼の孤独を癒やしてあげたいのに。

 

そして判明した事実。

クリスティーナは5年前に出産していた!

5歳になる女の子の父親は誰??

 

僕はやましいことは何一つしていない、と言い切るダニエルの言葉を信じたいカオリ。

 

が、DNA鑑定は99.9% 子供の父親はダニエル、と出ていました。

 

レイプ犯のことを知らない、姉の妊娠に気づかなかった・・ダニエルが言うけれど

 

カオリは、自分がダニエルを信じてない、疑っている。

あんなに好きだったダニエルをもう愛せないことを悟るのでした。

 

クリスマスが終わった5日後、クリスティーナは天に召されました。

 

クリスティーナは亡くなり、ダニエルは不起訴処分を勝ち取りました。

 

ようやく真実にたどり着いたけれど…

2月初め、ダニエルがカオリを訪ねてきました。

カオリは、ダニエルの話が信じられなくなっている、信じたいのに。

 

2つの思いの間で苦しいカオリに、ついに打ち明けてくれた真実は、驚くべきものでした。

 

⚠️ 此処から先、ネタバレあります、ご注意ください。

 

 

 

 

 

 

彼は本当のことを語ってくれました。

 

お姉さんは、赤ちゃんを産みたかった。

ずっと前から求められていたけれど、姉弟だからできない…と突っぱね続けていたけれど。

 

あの晩、姉と愛し合い求めあったのは、とても自然なことで、素晴らしい体験だった…と言い切るダニエル。

 

こんな愛の形もあるのかな? 近親相姦ですが。

 

赤ちゃんは家族や病院のみんなから祝福され、エンジェル、と名付けられたと。

 

本のタイトルはここからかな?

 

 

真実を話したダニエルとはそれが最後になってしまいました。

 

ダニエルはカオリの信頼を得られなかった、と諦めたのでしょうか。

 

 

彼が置き忘れていった1冊のノートは

クリスティーナのノートでした。

そこには、愛するダニエルへ、で始まる熱い思いの詰まった文章がびっしりと書き綴られていたのでした。

 

実弟への愛…

 

釈然としない事件だけれど、実話をもとに書かれています

著者・小手鞠るいさんの言葉

ニューヨーク州の片田舎で私がこの事件に遭遇したのは、今から十年ほど前のことでした。ひとりの女性として、人の子として、私は事件に興味を抱き、吸い寄せられるようにして、取材を始めました。けれど、当事者や関係者の話を聞けば聞くほど真実は遠ざかってしまい、書くことを封印したまま、長い歳月が流れました。そんなある日、ふと手に取った古い詩集を開いた時、この小説の一行目が舞い降りてきたのです。まるで光に包まれた天使のように。

引用元:河出書房新社HP

 

これが実話だということに驚くばかり。

 

  • 実姉が実弟に性的関係を求める
  • 近親相姦
  • 障害者に対するレイプ
  • レイプによる妊娠

 

障害があって寝たきりの女性が、求めたからと言ってそういうことする?

しかも二人は血が繋がった姉弟。

 

本当に、そこに愛はあるのか?

 

エンジェルちゃんの幸せを願うばかり。

 

少しもやもやの残る物語でした。

 

エミリー・ディキンソンの詩集から引いた言葉が効果的に使われています。