芥川賞作家、今村夏子さんの「星の子」を読みました。
すごく読みやすいのと、どうなる、どうなる?と先へ先へと気持ちがはやって、読むのに1日かからなかったです。
Amazon評価 ★3.9
林ちひろは中学3年生。病弱だった娘を救いたい一心で、両親は「あやしい宗教」にのめり込み、その信仰が家族の形をゆがめていく。野間文芸新人賞を受賞し本屋大賞にもノミネートされた、芥川賞作家のもうひとつの代表作。
Amazon 紹介ページより
今村夏子さんの新刊『星の子』は
「小説トリッパー」掲載直後から大きな反響を呼んだ話題の一冊。出版社からのコメント(朝日新聞出版)
主人公・林ちひろの視点で書かれたカルト宗教にハマる家族の物語。
安倍元首相を銃撃した犯人の母親も、カルト宗教に献金して、子供ほったらかして…大金を献金して家には食べるものもなかった…とニュースで読みました。
新聞で読んだ、カルト信者二世を取材した記事が興味深かったです。
生まれた時から、周りがカルト信者で、おかしいと思っても抜け出すこともできず。
大人になって、ようやく距離を置けるようになって、非信者の男性と結婚しようとすると相手はサタン(悪魔)だと責められた…と。
自分が正しいと信じている人を翻意させるのは至難の業です。
おかしい、騙されている、とちひろの叔父が怪しい水「金星の水」を水道水に取り替えても、激怒してまだ宗教を信用し高い水を買い続けるちひろの両親。
やがてちひろの姉は、家に帰らなくなって、消息不明になってしまいます。
姉は、病弱だったちひろを救った宗教に傾倒する両親に嫌気がさしていたようです。
すぐに献金してしまうからか家にはお金がなく、叔父がちひろの修学旅行代を出してくれたりと普通ではないです。
宗教における献金とは、志であり、金額によって、信心の深さが測られるわけではないのに、新興宗教に限って、献金、献金と信者から巻き上げます。
貧しいことが必ずしも不幸ではないし、貧しくても幸せな人は大勢いらっしゃいます。でも、献金しすぎて、食べるものにも困る生活は幸せなのか、そこまでする必要ある?
しあわせはいつもじぶんのこころがきめる 相田みつを
その理論で言えば、傍目からみたら、一般常識からかけ離れた生活をしていても「私達これが幸せなんです」と言われたら、そうですか、としか言えないですね。
でも、法律で信教の自由が保障されているのだから、大人になって改宗するのはありなのに、教団での立場が悪くなるのを恐れるのか、
本気で他人は悪魔だと思っているのかも。
好意を寄せている 高校の数学の先生の車で家の近くまで送ってもらった時に、公園のところに「変なやつがいる!」と先生が叫んで、車の中に引き戻しました。
変なやつ、と言われたのはちひろの両親でした。
公園で頭の上に置いたタオルに霊験あらたかな水を注ぎあってたのです。
周囲の人から見たら「奇行」でも本人たちは大真面目に健康のためにやってます。
クラスメートも、ちひろの親のことはみんな知ってるけれど、ちひろ自身、そんな両親を嫌悪するふうでもなく、それでいて、思い通りにならないことが多くて生きづらそうでもあります。
親子3人で教団の研修会に参加した夜、宿舎を出て一緒に流れ星を見に行こうとちひろを誘う両親。
両親はまだお風呂に入っておらず、お風呂の時間にも制限があるから、とちひろの心配をよそに、「いいから、いいから行きましょう」と強引にあかりもない山道を歩いていくときは、この先に一体どんな展開が待っているのか、とドキドキしました。
3人が同時に流れ星を見つけられるまで、ずっと星空をながめていましたとさ。
え? 終わり?
唐突に話がぶち切られた感じでちょっとびっくり。
親がカルト宗教にハマってお金を持ち出し、家庭が崩壊した話、その地獄から抜け出した話、そういう著書がたくさん出てます。
洗脳を解くには、多くの時間を要しますし、カルトのせいで不幸になった人たちを思うとやるせないです。
ただ、カルトの人たちは「良かれと思って」やっているのが恐ろしい所。
以前、幼い子どもに狐が付いている、と某宗教の人が言い出して、その子から狐を追い出すためによってたかって殴ったので、子供は親、親戚の人たちに撲殺されました。
親は子供から狐を追い出すために必死で殴ったのでしょう、子供のために。
結果、我が子を自らの手で死なせてしまった…なんのための宗教やら。
銃撃犯の母親も、カルト宗教に救われるために入ったんだろうと推察できますが、家族を不幸にする宗教があっていいものか?
最近の事件のこともあり、いろいろ考えさせられた本でした。
以前読んだ、カルト村での事件を書いた本「琥珀の夏」の方がドロドロしてました。
2020年10月、芦田愛菜主演で映画「星の子」公開されました。
お父さん役に永瀬正敏、お母さん役に原田知世。