久しぶりに芥川賞受賞作を読みました。
芥川賞は、純文学に与えられる賞故か、何が面白いのかわからない作品が多く^^;
好みの作品が少ないのですが…
この作品は面白い!!
Amazon ★3.8 ★5=37%
「二谷さん、わたしと一緒に、芦川さんにいじわるしませんか」
心をざわつかせる、仕事+食べもの+恋愛小説。職場でそこそこうまくやっている二谷と、皆が守りたくなる存在で料理上手な芦川と、仕事ができてがんばり屋の押尾。
ままならない微妙な人間関係を「食べること」を通して描く傑作。引用元:講談社HP 『おいしいごはんが食べられますように』内容紹介
⚠️ネタバレあります、ご注意ください。
いるいる!こんな女性!…イラッとするけどどんどん読み進んでしまう!
ラベル・パッケージ制作会社の埼玉支店。
- KYな支店長
- 支店長補佐・藤さん
- パートの原田さん
- 最近転勤してきた二谷さん(男性)
- 体が弱い芦川さん(女性)
- 学生時代チアリーダー部だった押尾さん(女性)
主に、二谷さんと押尾さんが芦川さんに対する感情の吐露で進みます。
押尾さんは、二谷さんと芦川さんが付き合っていることを知っています。
それなのに、講談社の内容紹介にあるように、
「二谷さん、わたしと一緒に、芦川さんにいじわるしませんか」と意地悪を持ちかけまる、ってなかなかストレートな押尾さん。
そして、芦川さんとつきあっているのに、たしなめるでもなく、断るでもなく受け入れる二谷も変わってますね。
芦川さんは、読者がイライラするように描かれています。
芦川さんは…
①体が弱いので偏頭痛になったら仕事を残してさっさと早退する
②残された仕事は押尾さんに回ってくるが、芦川さんのミスのツケを押尾さんが被る
③早退した翌日に、体調よくなったから、と手作りケーキを焼いてくる
④藤さんが勝手に飲んだと知っていて、芦川さんはそのペット飲料を皆の前で飲む
⑤居酒屋で藤さんが落ち込んでいると知って、後ろから抱きしめて上げる…ぞわぁ
⑥川原で猫が穴に落ちているのを見て、助けなくちゃ、という芦川さんだけど、結局しっかり者とされている押尾さんが雨の中、深い穴に腕を伸ばして、バッグも使って猫救助。振り返ると堀川さんは自分だけ傘をさして、み〜て〜る〜だ〜け〜 イラッ!!
それでいて、職場で芦川さんは、お菓子を作ってきてくれるマメで優しい女性、ということで通っていて、彼女が「うふふ」と笑うと、なし崩し的に許してしまう空気がある。
こんな職場で絶対働きたくない!!
二谷の食に対する屈折した思い
二谷は、食べることに対する意欲が希薄。
一日分の栄養を摂れるカプセルがあるなら、それを飲んで済ませたい。
スーパーやコンビニで出来合いのお惣菜が売っているのにわざわざ手作りするのが理解できない、といいます。
が、二谷の彼女は、芦川さん。
そう、あのお料理が得意な芦川さんですから、週末家に遊びに来ては手料理を作ってくれます。
が、全然ありがたくない。
手作りのお菓子や料理を食べる時に、美味しい、すごい、と褒めちぎらなければならないのもしんどくて
彼女が寝てる隙にカップ麺を食べて、ホッとするのです。
タイトルの『おいしいごはんが食べられますように』に笑う
芦川さんへの意地悪がバレて職場で問題になり、結局退職する羽目になった押尾さん。
なんだかやるせない。
芦川さんの分まで仕事をして、彼女のミスで嫌な思いもさせられたのに…
結局、芦川さんは残り、押尾さんは負けた形になりました。
応援してたのに…w
「食べること」に執着のない二谷と、食にこだわって手料理をかいがいしく作る芦川さん。
正反対のふたり。
二谷が、「(芦川さんと)結婚するのかなぁ???(自信ないなぁと続きそう)」と独りごちると
「結婚」のところだけ聞こえたらしい芦川さんが、キラキラしながら「わたし、毎日おいしいごはん作りますね」って言う。
二谷さんは
それ…迷惑なんですけど…とも言えず。
「おいしいごはんが食べられますように」の言葉は、押尾さんからの最大限の嫌味のように思えて笑ってしまいました。
「おいしい」話の中では異彩を放つ物語
美味しい、という感情は、人を幸せにしてくれるもの、というのが一般常識だと思っています。
おいしいものを食べて、乗り越えた、
みんなで美味しいものを作ったり食べたりして、みんなに笑顔が…みたいな物語が多い中
この物語に出てくる二谷のように、「食べること」が面倒で苦痛。
そのくせお付き合いしているのは、料理自慢の女性でなんだか屈折しているんです。
お菓子を焼いて職場に持ってくる芦川さんは、天然なのか、強かなのか?
職場でありがちな話をシニカルに描いていてあっという間に読めました。
こんな女性いそう〜、居たらヤダな〜(笑)
面白かった!