の女王 湊かなえ最新作は 直木賞候補 今年の5月22日刊行の「未来」を読みました。
新聞広告には
デビュー10周年記念作品 湊ワールドの集大成!の文字が踊っています。
もうページを繰る手が止まらない~~ 1日で読んでしまいました。
夕飯作りながらでも読みたい、もう先が気になって仕方ない作品です。
445ページもあり読み応え十分。それでも先が気になって スイスイ。
自分が後から どんな内容だったか思い出すための記事ですのでネタバレしています、ご注意ください。
序章と終章の他に
章子の章とエピソードⅠ エピソードⅡ エピソードⅢからなっています。 未来への希望をつなぐ「章子」 この章だけで 本の半分ぐらいのボリュームです。
ある日 30才の未来の自分から 10才の自分宛てに届いた一通の手紙。
自分しか知らないエピソードが盛り込まれていて 他人がいたずらで書いたとは思えない内容でした。丁度父を亡くしたばかりで 母と2人になってしまって心細い章子に明るい将来を思い描かせる内容でした。
サンタクロースは信じてる子供のところにしかこない、の理論でこれは本物の未来からの手紙だ、と信じることにした章子は いつか自分からの手紙を大人の章子に届けられるかも知れない、その日のために 大人の章子へお返事を書くことにしました…
お手紙の内容から 章子の両親のこと、学校の友達のこと、友達の抱えている諸事情などが見えてきます。少しずつ少しずつパズルのピースを集めるように いろんなものが見えてくるところが面白かったです!
そうやって 10歳から15歳へと成長していく過程で いろんな苦しいことがこれでもかと押し寄せてくるのでした…
そして 「章子」の章で登場した人物にまつわる事件が語られます…
◆エピソード I 章子の同級生・亜里沙ちゃんと 先輩の智恵理ちゃん。家庭内性暴力。
◆エピソード II 篠宮真唯子先生にまつわる話。先生の仕業だと思った、やっぱり。それらしきことが手紙に書かれてます。将来の職業のこと。
◆エピソード III 章子の父の高校生時代。いろんなものを捨てて故郷をも捨てなければならなかったのは…章子の母を守るため。かなりの重罪故、章子の父は墓場まで持って行くと決めた「秘密」。それが一気に暴露されます。伏線回収章。
それにしても 性的虐待、暴力、貧困、近親相姦、放火…
ミステリーには犯罪と嫌な気分がつきものですが もうさすがイヤミス(嫌な気分になるミステリーの略)の女王様、
最初は未来からの手紙に どんなに嫌なことがあっても明るい未来につながるなにか心強いメッセージがあって 章子は逆境にもめげず生きていくのか、と思ったのですが…
一番暗澹たる気持ちになるのは 無力な子どもたちを取り巻く大人(先生、親)が無責任で 時に子供への加害者になっていること。
誰もが生まれ落ちたときは 裸で生まれてくるけれど環境によってこんなに苦しい思いをする子どもたちがいる不条理にやりきれない気持ちになります。
それがますます イヤミスに拍車をかけます。
読み始めたときは 「明るい」イメージのある「未来」というタイトルに、子どもたちの将来が今より好転していくことを期待して読んでいたので、次から次へと読んでいて苦しくなる展開でした。
この本の中の心の拠り所として夢の国「ドリームランド」(ディズニーランドみたいな所)が象徴的に出てきます。
最後は 家庭環境に苦しむ章子と亜里沙がドリームランドに向かうバスに乗るところ、一見明るく描かれてますが2人は ここに来る直前に、親または親代わりの人を毒殺して逃げて来ているのです。
終わり方は 声を上げて 助けを求めよう、未来のためにーーと明るく結ばれていますが、よく考えたら 殺人を犯してる割に軽いな、と。
お口あんぐりのラストシーンでした。
直木賞、とれるでしょうか??
この所、森絵都著「みかづき」472ページ、「屍人荘の殺人」331ページとボリューミーな本が続いて若干疲れ気味。まだ「護られなかった者たちへ」350ページが待っている…