百田尚樹著「永遠の0」読みました
以前、百田尚樹著の「モンスター」を読みましたが
整形美人の復讐劇「モンスター」とは 全く趣を異にしています。
この作品、「永遠の0(ゼロ)」(2006年)は、百田尚樹さんのデビュー作だそうです。
タイトル・永遠の0の「ゼロ」とは太平洋戦争で活躍した戦闘機、零戦の事なんですね。
最後のエピローグでは 涙を止めることができませんでした。
哀しいけれど 読後感清々しい、感動巨編です!!
お勧めですっ!!
ネタバレ 注意
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主人公・佐伯健太郎は、6年前に母方の祖母が亡くなった時
祖父は、実は祖母の二番目の夫であり
最初の夫は戦争で特攻で亡くなった、
死別した一人目の夫との間に生まれたのが 母・清子だと聞いた
フリーライターをしている健太郎の姉は、健太郎と共に
自分たちのルーツである実の祖父を知るため
祖父を知る 戦争の生き残りの人たちを訪ね 話を聞いてまとめることにした。
この本のほとんどが 祖父を知る海軍の飛行兵の人たちが
祖父の人となりや祖父との思い出と共に語った 悲惨な戦争体験談です。
人によって 健太郎の実の祖父・宮部久蔵の印象は違います。
それは、立場や性格の違いからくるのでしょう。
最初は臆病者で 海軍の志願兵のくせに 生きて変えることを望んでいた
と、あまり心象の良くない思い出話をきかされるのですが
久蔵を知る 戦争の生き証人たちの話を聞くうちに
素晴らしい人間像が浮かび上がってきます。
そして最後に 祖母と一人目の夫、二人目の夫との真実が語れます。
新聞の戦後特集でも 戦争体験を読んだり
テレビで特集番組があれば 見たりもしますが
これほどの筆致で 細かく書かれた文章を読むのは初めて。
それだけに 戦争の悲惨さが胸を打ちます
マスメディアでしばしば語られるので
零戦は強いという事は知っていても イメージだけで
どのような 戦闘機だったのか知りませんでした。
健太郎の祖父・宮部久蔵は 零戦のパイロットだったので
ゼロ戦がいかに素晴らしく、またいかなる弱点を持っていたかも
仔細に書かれています。
いくら高性能の零戦(零式戦闘機)といえど
それを操るのは 生身の人間だったんだということを
この本を読んで改めて思い知らされました。
飛行機を操縦するだけでも 集中力が必要なのに
どこから 攻撃を受けるともわからず
長引けば7~8時間もトイレにも行けず食事もとれず。
ましてや 敵地ゆえに着陸することもままならず。
ともすれば 被弾して血まみれになりながらも
必死の思いで 操縦桿を握って帰艦するパイロットたち
生々しい告白に、胸がえぐられる思いです。
読み進むにつれ あまりのむごさに、読むのが辛かったりします。
それとともに 日本軍に対する怒りが沸々と込み上げて来るのです
負け戦と知りながら 未来ある若者の命を無駄させた日本軍
犬死とも知らず お国のために、と尊い命を自ら差し出した若者たち
その心の内を思うと、熱いものがこみあげてきます
軍は自分たちの面子を守るため 非道なことをあちこちで行っていたようです
そんな軍人の中でも 心が温かく 周囲に迎合せずに正義を貫いた男
そして、アメリカ軍にさえ恐れられ 敬意を持って水葬にふされた男
それが 健太郎の祖父・宮部久蔵だったのだ。
戦艦に体当たりして玉砕する、人間魚雷「回天」は有名なので知っていましたが
「桜花」という 戦艦めがけて急降下で突っ込む戦闘機もあったと知りました
桜花は 突っ込んでいくだけなので 爆弾は搭載されてなかったのです
が、目的を達する前に 大概の戦闘機は敵に撃ち落とされていたそうです
まさに 桜の花が散るように 潔く死んでいけと
若者を死に向かわせた日本軍
死は名誉なことなのだと、
錦の御旗の名の下では 喜んで命を差し出さざるを得ない
なんと非情な命令でしょうか・・・
ジャーナリズムが戦争への機運を牽引し
時代が戦争を肯定し、国民もその大きなうねりに巻き込まれていった
戦争に行った人も 銃後の守りに付いた人も
抗いようの無い 時代の流れの中で辛酸を舐めてこられたんだな、と
改めて自分たちの親の世代に尊敬の念を抱かずにはいられません
そんな苦難の時代を経て、がむしゃらに働いて経済成長を遂げ
今の日本の礎を作ってくれた戦争体験世代に感謝です。
今 飽食の時代に、のんびりと、平和の「有難さ」すら感じず
瑣末なことに 悩んだり 不平不満を抱く現代人。
この当たり前の日常さえ許されなかった 戦時中の人たちの
大変な苦労を 思えば 小さなことなのかもしれません。
戦争がテーマだけに 心にズシンと来る作品です。
この小説を通して 私を含め、一人でも多くの現代人に
自分の生活を見つめ直すきっかけになればいいなと思います。
地球上から 戦火が絶える日が来るのを祈らずにはおれません。
1ヶ月後に迎える終戦記念日
鎮魂の想いも新たに
今年は今までとはとは違う感慨と重みをもって この日を迎えそうです。