happyの読書ノート

読書感想を記録していこうと思います。 故に 基本ネタバレしております。ご注意ください。 更新は、忘れた頃に やって来る …五七五(^^)

横山秀夫著「64(ロクヨン)」 読了~♪

昨年11月17日に図書館に予約していた 横山 秀夫著「64(ロクヨン)
今日も図書館、1200人待ちです


この作品が上梓されると同時に、各メディアで、大きく取り上げられました。

朝日新聞でも、「本屋の棚心」(2012.11.16)でも、
日曜日の読書欄(2012.11.18)でも取り上げられてしました。

ファン待望の 著者7年ぶりの長編です。

先日発表された、私が信頼を置く「2013年本屋大賞」、グランプリは逃したものの
第二位に輝いています。
2012年「このミステリーがすごい!」と「週刊文春ミステリーベスト10」で1位に!
期待が高まります!


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本の帯には、
「警察小説の真髄が、人生の本質が、ここにある

人生の本質! 人生の本質ってなんだ??これは読まなくては!!





ネタバレあります、ご注意ください [emoji:e-1]


D県警警務部広報官三上は、前年まで刑事として捜査二課に所属していたが
人事抗争で 不本意ながら
刑事とは対極の立場である警務部広報官に異動になった…。

昭和64年に起きて、迷宮入りしている
符丁「64(ロクヨン)」で言い習わされている事件にまつわる謎解きと

人間・三上広報官の様々な葛藤や苦悩など内面を細かく描写し
読み応えあります。


三上の葛藤

家出をした三上の娘を、日本の警察が総力を上げて探してくれている。
人身御供の状態。
そんな背景が有るために、肩身が狭い三上。

鬼瓦と揶揄される三上のルックス。
元同僚の美しい妻とは、「美女と野獣」と言われ、
いつも仕事にかまけて家庭は妻任せ。娘は家出。消息不明。
妻は本当に自分と結婚して幸せだったのか、いつも自問する三上。


元刑事の三上は、立場の違う警務に移り、「元刑事」と煙たがられ
刑事の方では、警務に話すネタは無い、と邪険にされ、
どちらつかずの立場に悩む。


警察 VS マスコミ
記者クラブとの、実名報道についての攻防
そしてそれは、別のゼネコン事件にも絡んでいる。


三上の高校時代の剣道部の仲間が
今は上司になっているニ渡。
当時主将だった三上と立場が逆転。
人事面でも鬱々とする三上。


昭和64年に起きた誘拐事件「ロクヨン」は、最悪の結果を迎え
犯人をみすみす逃して迷宮入りに。
この事件の被害者宅を、長官が訪問することになり、
再びあの「64(ロクヨン)」がクローズアップされることになった。


「幸田メモ」というキーワードを切り札に
当時の関係者に接触し 事実を教えてもらおうと動きまわる三上。


手駒をちらつかせながら相手の反応を見、
どこまでを出して、どこを秘すのか、
その頭脳戦は、息詰まり、手に汗握る展開です。


マスコミとの攻防も、丁々発止の白熱戦も
たたみかけるような筆致で読まされます。


主人公三上の周りには、家庭でも職場でも嵐が吹き荒れ
心休まる時がないのです。


車の中で、一人、これでよかったのか?と紫煙を燻らす時、
心の中をヒューッと冷たい風が吹き抜けていくのが
見えるようでした。


三上の独白が重く、読むものの胸に迫ります。


64という事件に潰されてしまった警察関係者

64の被害者の父には、まだ事件は終わってはいなかった。


本編最後の64の模倣犯の件は、
若干蛇足の感が否めませんが
警察と犯人の逃走劇がスピーディに描かれていて
読まされました。


最後に、三上は、刑事に戻る人事を提案されます。
それは、少し前なら、喉から手が出るほど欲しかった人事。

だけど、最後は、広報官という仕事に意義とやり甲斐を見出し、
この仕事は、責任をもって「自分」が成し遂げるのだ!
と仕事に誇りを感じ、気持ちを新たにするのでした。


これほどまでに、警察の内面に切り込んだ作品。
警察の方が読まれたら、どのような感想を持たれるのか、
聞いてみたいです。


こんなの、フィクションだよ!と笑い飛ばすのか、
なかなか、よく取材をして書いている、見てきたようだ、となるのか。


三上の心情をなぞるのは、なかなかヘビーでしたが
読まされ、読み応えありました!


「広報官・三上の葛藤」という、サブタイトルをつけてもいいかも!