柚月裕子さんの作品を読むのは 3作品目です
今年の9月11日に 新聞広告に出ていて興味を持った「ウツボカズラの甘い息」を読んでみました。
家事と育児に追われ、かつての美貌を失った高村文絵。彼女はある日、出掛けた先で見覚えのない美女に声をかけられる。大きなサングラスをかけたその女は『加奈子』と名乗り、文絵と同じ中学で同級生だというのだ。そして文絵に、あるビジネス話を持ちかけるが―。この再会は偶然なのか、仕組まれた罠か!?鎌倉で起きた殺人事件を捜査する神奈川県警捜査一課の刑事・秦圭介と鎌倉署の美人刑事・中川菜月。聞き込みで、サングラスをかけた女が現場を頻繁に出入りしていたという情報が入る…。事件の鍵を握る、サングラスをかけた謎の女とは!?日常生活の危うさ、人間の心の脆さを圧倒的なリアリティーで描く、ミステリー長篇。
「BOOK」データベースより
広告には「12万部突破」の文字。
平凡な主婦が堕ちていく狂気の罠。
そして「鎌倉で起きた殺人事件の容疑者・高村文絵は、ある女に頼まれたと頑なに無実を訴える。しかし、文絵が証言した女は数年前に死んでいることがわかり・・・。」
えっ?? どういうこと? これは読んでみなければ、と本を手に取りました。
感想です、ネタバレあります、ご注意ください。
1人の平凡な主婦・高村文絵が謎の同窓生との出会いから、どんどん相手の甘言に乗せられ、深みに嵌まっていくプロセスを描く部分と、
鎌倉の別荘で起きた殺人事件を捜査する刑事たちの部分が交互に描かれて、読者を最後まで勢いよく引っ張っていきます。
高村文絵は、中学時代、美しく、周囲の憧れの対象だったのですが、結婚し、子供を授かった今では過去の文絵は、見る影もありません。
平凡な毎日の唯一の楽しみは、鑑賞に応募すること。
そんな文絵のもとに、ディナーショーのチケットが送られて来ました。
こんなプレゼントに応募したかしら?と疑問を抱きつつ、高級ホテルでのディナーショーと言う晴れやかな場に行ってみたい気持ちが勝り行ってみました。
ショーも終わって帰ろうと言う時に、杉浦加奈子と名乗る大きなサングラスをかけた女性に声をかけられます。…彼女は、中学時代の同窓生だ、と言うけれど文絵は、明確に思い出すことができません。
畳み掛けるように、次々と当時のエピソードを繰り出す女性。
気がつけば、強引な彼女に抗えず、彼女の鎌倉の家で合う約束をしてしまっていました…
文絵が、加奈子にのせられて、あれよあれよという間に、高級化粧品の魅力を語る講師になり 多額の収入を得て変わっていくプロセスが面白いです。
騙されているわよ、と読者はハラハラドキドキで見守ります。
鎌倉の別荘に出入りしていたのは目撃情報などから「サングラスをかけた女性」とわかっていて、いつ捜査と文絵が結びつくのか、とページを繰る手が止まらないのです。
入念な捜査の過程は、久しぶりにミステリーを読む醍醐味を味わいました。
警察小説がお得意の柚月裕子さんらしい、担当刑事の鎌倉署の秦と、相棒の新米女性巡査の中川菜月との会話劇も楽しめました。
気がつけば、投資詐欺事件という犯罪の片棒を担がされ、講師を務める時に見守ってくれていた男性・田崎実殺害容疑をかけられていた文絵。
加奈子とは連絡が取れず。
事件を追う秦は、文絵が卒業した中学を訪問して聞き込みをし、関係者をあたると…杉浦加奈子は5年前に自殺していた???
何者かが 加奈子になりすまして…
と、この辺りから 捜査がすごい勢いで展開していきます。
ここまでのペースとは違って、情報ぎっしり、速いテンポで進み、加奈子になりすましていた女は、余罪が多数あって、田崎以外にも殺害に手を染めていた事もわかるのですが、あまりにも情報ギュウギュウ詰めで
( ゚д゚)ポカーン
最後のあたり、無理やり終わらせた?ってぐらい。
文庫本で544ページ。このままだと700ページを超えるかも、と駆け足で終わったのかな?
ちょっと残念でした。
シドニーで、犯罪で得たお金で優雅なバカンスを楽しんでいた女の元に 警察が訪れました。
他人になりすまして生きてきた女は秦の口から自分の名前が呼ばれて 。
それは久しぶりに聞く 真野知世、というかつての名前でした。
面白かったです。
よくできています。
秦刑事自身のドラマも盛り込まれていて読まされました。