happyの読書ノート

読書感想を記録していこうと思います。 故に 基本ネタバレしております。ご注意ください。 更新は、忘れた頃に やって来る …五七五(^^)

高野史緒著 「カラマーゾフの妹」読了♪

第58回江戸川乱歩賞受賞
週刊文春の2012年ミステリーベスト10 第3位

高野史緒著 「カラマーゾフの妹」を読みました。

       カラマーゾフの妹



カラマーゾフの兄弟なら知ってるけど(タイトルしか知らないけど)妹とは???

という、単純な疑問と江戸川乱歩賞受賞作にして
ミステリーベスト10入りしてるので読んでみました。


学生時代にドストエフスキーの「罪と罰」を読んで、
あまりの重苦しさと、登場人物の名前が覚えられないってことで
ロシア文学は あれ以来敬遠しておりました。


ドストエフスキー著「カラマーゾフの兄弟」を
読まずして、いきなり、この「カラマーゾフの妹」を読んでよかったのか??


「兄弟」の方を読んでないから
どこからどこまでが、原作どおりで、どこからが
著者・高野史緒さんの創作なのか分かリづらいです。
(私の読解力がないだけなのか、高野さんが巧いのか)

でも、未読の読者にも分かるように、「兄弟」のストーリーを
サクッとおさらいしてくれて、未読の読者にも親切~♪

ご参考まで → カラマーゾフの兄弟 Wikipedia

カラマーゾフの兄弟は、完璧なまでの作品と言われてるそうで、
その続編を書くという偉業を成し遂げた高野史緒さん、
天晴です! しかも江戸川乱歩賞受賞だし~。


そうそう、巻末に、江戸川乱歩賞選者の選考評が載っていて
読んでいて面白いです。
ダントツ 「カラマーゾフの妹」が評価を得ているのが分かります。


原典である「カラマーゾフの兄弟」の未解決の事件を
深く読み解いた筆者。
続編を書かずして 鬼籍に入ってしまった
ドストエフスキーになり替わって
自分こそが「続き」を書こうと思いついたところがスゴイ!!


犯人ネタバレしています、「兄弟」「妹」未読の方は、
ご注意ください。





カラマーゾフの兄弟」は、田舎貴族のフョードル・カラマーゾフ
3人の息子(ドミートリー、イワン、アレクセイ)の物語。

フジテレビでドラマ化されたのは、
次男・イワンが主人公のようですね。


いろんな視点から描かれていますね。



田舎貴族で放蕩者のフョードル・カラマーゾフは、
ある夜更けに、自室で鈍器で頭を殴られて殺された。


犯人は誰か?


フョードルと同じ女を好きになって取り合っていた
長兄・ドミートリーが真っ先に疑われ、
一貫して無実を訴えたにもかかわらず、シベリア送りに。
刑期を終えることなく病死した。     


敷地内に住む使用人・グリゴーリーの息子・スメルジャコフが
フョードル殺しを自白して自殺、事件の真相は
法廷で明らかにされることなく終わった…?

、というところまで、原典「兄弟」

この作品を子細に読み解き
作家・ドストエフスキーが、曖昧にしていた点をついて
新たな結末を導き出したのが、高野史緒さん。


次男のイワンは、兄・ドミートリーの無実を信じていた。
事件から13年後、警察官となって、
カラマーゾフ事件の再捜査を断行する。


天使のような、と形容される 末の弟・三男アレクセイは
修道僧を経て、事件から13年後は
教師になって、村人から慕われていた。



次男で警察官のイワンは、多重人格者で、
時々、記憶の中に謎の「妹」が登場する。
真実か幻か? 
その妹の記憶にまつわる部分から
イワンが、人格障害に陥っていったことが分かります。

イワンの多重人格の描写と対峙するのは、
心理学者でもあり科学アカデミーの
トロヤノフスキー。
二人の会話が興味深いです。


以前、「24人のビリー・ミリガン」(ダニエル・キイス著)や
「プリズム」(百田尚樹著)も多重人格者のお話で、
興味深かったです。


高野史緒さんの「カラマーゾフの妹」は、イワンが主人公の作品のようです。

そして彼を心理的に追い詰めたのが、亡くなったスメルジャコフ。
狡猾で 聡い男、事件をややこしくして、盛り上げるのに一役買っています。


後半、三男のアレクセイがクローズアップされます。

彼は革命へと走りだして行きます…


ミステリーだけでは終わらない読み応えのある内容になっています。 
その分、話が多岐にわたって、後半は散漫な印象を受けますが・・・。


さてさて、父親殺しの真犯人は…??

意外な人物!!



言っていい?? 未読の方はここまで!!








高野史緒さんが導き出した犯人は…





アレクセイ
天使のような、の評価の陰で、幾つもの殺人に手を染めています。






この作品を読みふけっていると、行ったこともない
19世紀後半の ロシアの寒村、

暗い雲が垂れこめた空の下、だだっ広い大地が広がる
薄ら寒い情景が脳裏に浮かんで 

カラマーゾフ事件の世界に引き込まれるのでした…。