手元に本が無いので ひさしぶりに本を購入しました。
どんな本を選ぶのか迷うところですが 書店の平台にあった「坂の途中の家」
WOWOWでドラマ化、という帯がかかっていました。
角田光代さんの作品は「八日目の蝉」「森に眠る魚」など母と子をテーマにしたものが面白かったので間違いないだろうと購入しました。
以下ネタバレありますのでご注意ください
裁判員制度が施行されて 今年の5月で丸10年になるそうです。
アメリカのように 日本にも裁判員制度を!と望まれていたはずが 実際施行されると辞退者続出、の報。
裁判員になったら どのようなことをするのか、知る人は少ないです。
この本は 裁判員になった女性が 自分の担当する裁判の被告と自分を重ね合わせて苦しむ様子が描かれています。
その過程で 裁判員の1日、裁判官や 裁判員同士でどのような話し合いがなされるかも描かれます。
角田光代さんの描かれる作品は 心の闇に焦点を当てていて 誰の心の中にも巣食う 悪意を取り出して見せます。
それが とても怖いです。
1歳にも満たない我が娘をお風呂に落として殺してしまった水穂、水穂と夫との関係、夫の母との関係、証言で語られる一言一言に 自分と我が娘・文香(あやか)、夫、夫の両親とを重ね合わせて 夫や夫の両親に対して疑心暗鬼になったり 悪く捉えたり。
自分で自分の首を締めるような発想、負のスパイラルに入り込んで行きます。
読んでいて苦しくなります。
主人公・里沙子は 被告人・水穂の証言を聞けば聞くほど 自分が水穂であるかのような錯覚に陥り 水穂の立場を弁明してしまう自分を恐れます。
被告・水穂の家庭と 主人公・里沙子の家庭がリンクしていく緊迫感のあるストーリーに ページを繰る手が止まらない。
作中では 誰も殺されたり 追われたり 脅迫されたりということは無いのに、ゾッとするような怖さのある小説でした。
BOOKデータベースには
刑事裁判の補充裁判員になった里沙子は、子供を殺した母親をめぐる証言にふれるうち、彼女の境遇に自らを重ねていくのだった―。社会を震撼させた乳幼児の虐待死事件と“家族”であることの光と闇に迫る、感情移入度100パーセントの心理サスペンス。