happyの読書ノート

読書感想を記録していこうと思います。 故に 基本ネタバレしております。ご注意ください。 更新は、忘れた頃に やって来る …五七五(^^)

【柚木麻子】「3時のアッコちゃん」読了 アッコちゃん登場しない2編はイマイチ

先日、図書館で柚木麻子さんの「ナイルパーチの女子会」を読んで、面白かったので、本屋大賞ノミネート作だった「ランチのアッコちゃん」のシリーズ続編になる「3時のアッコちゃん」を読んでみました。

 

4編中、2編はアッコちゃん登場せず

装丁が可愛いので惹かれます♥

 

先程、久しぶりに、自分が書いた「ランチのアッコちゃん」読了時の記事を読み返してみたら…すっかり忘れてましたが「ランチのアッコちゃん」も、4編中2作はアッコちゃん登場しなかったんですね…

8年も前のことですっかり忘れていました^^;

 

最後に読んだ「幹事のアッコちゃん」は、4編ともアッコちゃん登場で胸熱でした。

 

「ランチのアッコちゃん」の4作のうちのアッコちゃんが登場しない作品も面白かったです。

「小説推理」に掲載作品を単行本化しているので、「幹事のアッコちゃん」の様にいろんなアッコちゃんを読者は求めていると思うのですが…。

 

3時のアッコちゃん

表題作「3時のアッコちゃん」は、夫の経営する本屋で店番をしながらアイスキャンディーを舐めながらPCを覗いていると…すごいながら族ですね^^

 

店に大柄の女性が入ってきて購入本をタワーのごとく積み上げ、開口一番の言葉が「はずれ」

主人公・澤田三智子が食べていたアイスキャンディーのバーに書かれた文字を読み上げた、その人こそ半年ぶりに会うアッコちゃんでした。

夏場から、クリスマス商戦で売り出すフランス製シャンパンの販売企画を考えている三智子に「すべてはお茶とともに始まる Everything starts with tea」という言葉を教えてくれました。

頭の使い方次第では、会議を牛耳れる。会社の舵取りが出来る。なんたって、お茶を用意する係なんですもの。

3時のアッコちゃん P12より

アッコさんは、自分がアフタヌーンティーを用意する、と三智子の会社の会議室の乗り込んできます。

月曜日から金曜日まで、毎回30分。

月曜日 ショートブレッドと紅茶(アールグレイ)

火曜日 きゅうりのサンドイッチと紅茶

水曜日 ビクトリアケーキと紅茶

木曜日 スコーンと紅茶(アッサム)

金曜日 クリスマスプディングとシャンパン(クリスマスで売り込む「ジョセフ」のもの)

 

ライバル社の企画に対抗するためにはリミットは金曜日でした。

お茶をしながらの思い出話や、ちょっとした思いつきでブレインストーミングするうちに、段々形が定まっていく…

それはパン作りで、バターと小麦粉が最初はポロポロなのに混ぜているうちになめらかに形が出来ていくのに似ています。

 

アッコさんが、時々ティーカップの底に挟んだメモの効果も大きいのでしょう。

アッコさんの言葉に背中を押されて、三智子は会議の進行を、舵取りを間違いなくできたようです。

 

「会議というのは、リミットを設けないと何も決まらない。金曜日までに何もなければ自分の案を通します、と全員に宣言しなさい」と書かれたメモ。

高潮物産に派遣されている「一派遣社員」にそこまでの権限があるのかどうか? 

会社によって違うのでしょうか?

 

できる男、山川部長は、バブルの頃のクリスマスの概念をいまだに捨てきれずにいます。

 

無理して幸せぶらない、世の中の流れについていこうとあくせくしない、自分の喜びは自分だけの宝物として穏やかに温めておく…、そんなライフスタイルを提案できるのは食卓から文化を牽引することのできる商社ならではの役割なのではないでしょうか。今までにないスタイルの提案は勇気のいることです。でも山川部長の決断力、ご経験があれば不可能ではありません。

3時のアッコちゃん P36~37より

三智子は、部長の尊厳を傷つけることなく、今までとは違うスタイルを提案する方向へと舵を切るように仕向けたんですね~^^

 

クリスマスプディングは、早くから作って熟成させるものらしいです。

アッコちゃんも、ずいぶん前から、この計画を練って、三智子を助けるつもりだったんですね♪

いつもそっけなくて、寂しい思いすらさせるアッコちゃんですが、こういうところに三智子への愛情が溢れていてじわっときます。

さらに、これを計画していたのは、三智子の夫の笹山だと教えてくれました。

面と向かっては何もいわないけれど、三智子の体調やキャリアのことを本の入荷案内メールと共にアッコちゃんに伝えて、いろいろ考えてくれてたのは…夫だったんだ…と気付かされて。

 

道しるべならこの手の中にあるのだ。いつだってヒントはそばにある。それに気付くか気付かないかは自分次第なのではないか。

3時のアッコちゃん P45より

メトロのアッコちゃん

こちらも月曜日から金曜日までの物語。

アッコちゃんは「東京ポトフ」をキッチンカーで始めましたが、夏場は売れない、とスムージーも始めました「東京ポトフ&スムージー」に名前も変えて。

そんなアッコちゃん、なぜか深い深い地下鉄の駅のホームでスムージースタンドをやってます。

東京に新しい地下鉄の路線を作るときには、深いところを掘らないと線が被ってしまいますから…新線の駅は地下深くまで下りていかねばならないです。

 

榎本明海(えのもとあけみ)は、やっとのことで手にした就職先で毎日をすり減らしていました。

次々と同期が心と身体を壊して退職していく中、入社から5年が経ちました。

会社に行きたくない。

何をやってもビリで、父と弟から馬鹿にされ続けて、人に馴染めず生きてきた明海が唯一父から褒められたのが有名フード企業グループの接客業務に採用されたこと。

去年の春にオペレーター部門に配属され、クレーム処理に精神をすり減らされ、パワハラの高橋リーダーは、かなりブラック。

 

月曜日

ホームの端でぼんやりしていると、ほうれん草と小松菜とりんごのスムージーを手に、無料キャンペーン中です、お試しください、とアッコちゃんが強引に手渡しました。

アッコちゃんには、今にも線路に飛び降りそうに見えたようです。

 

火曜日

スムージーを受け取る時にうっかり置き忘れた定期を取りに行くと…通勤定期を見た、と打ち明けもっと効率的な通勤の路線がある、とおせっかいも大概だわ(笑)

常連の男が

「君知ってる? ここのスムージーを、月曜日から金曜日までの五日間、飲み続けると仕事がデキるようになるんだって」と言います。

電車がホームに滑り込んできたのを契機に地下鉄に乗り込みます、「待ちなさいよ」の声を背中で聞きながら…

本来、お客様に向かって「待ちなさいよ」はないんですけども…圧強めのアッコさんだから。^^;

 

いくつか先の乗り換え駅に到着した時に、他のお客さんに混じってアッコちゃんも乗り込んできたっ!

 

目的地は一つでもルートは一つじゃない。←これは他のことでもいえますね^^

もっとうまい路線、乗り換え方法があるはず、とアッコちゃんは実践してみせたのですね。

そして、「内勤だからって、口紅一つ引かないのはいかがなものかしらね」これは、「お客様」に対してかーなーり余計なお世話ですが^^;

 

水曜日

アッコちゃんの指摘で、軽くメイクをした明海は、それだけで顔つきが明るく、いきいきした印象になった、と自覚します。

 

「前原さん、どう思う、彼女?」そう声をかけられた前原は、離れたところでスムージーを飲んでいたファンション雑誌の編集長。

読者の返信企画に参加してもらおうかしら?と勝手に話を進めています。

「私なんていつもみんなから…」

それはその人たちの価値基準でしょ。美の判断なんて国や地域によって違うのよ。リサーチを重ねて自分の釣り堀を見つければいいの。

メトロのアッコちゃん P67より

スムージーを飲まずに地下鉄に乗り込んだ明海の元へアッコちゃんがスムージーを届けに来ます。

定期を落とした時に社員証を見たのでしょう。

不機嫌で横暴な高橋リーダーに喝を入れてくれたアッコちゃんに、胸の溜飲が下がる思い、快哉を叫びたくなります♪

 

木曜日

アッコちゃんが会社にスムージーを配達に来て、いつのまにやらタイムカードを写メしてたらしい。100時間を越えていることを指摘。

上司からのメールは証拠として保存し、ここに連絡して、と人権派弁護士の名刺を差し出す。

無理をしてがんばるのではなく、自分がうまくやっていけるフィールドを見つけることも大事だ、とアドバイスをくれました。

 

金曜日

澤田三智子からのメールでここに来る、とわかったアッコちゃんは、エプロンを外して逃げ出してしまいます、店を明海に託して…

三智子は、「あなたもアッコさんに振り回されているの?」と仲間目線が温かい。

「アッコさんのやることなすこと、めちゃくちゃ強引じゃない」と言い切ります。

強引だと思ってもいいんだ・・・それだけで肩の力が抜ける明海。

 

一週間やそこらで人生は変わらない。

栄養価の高いものやストレスに効く食材を摂ったところで 大切なのは本人の元気になろうとする意思だ、と。

 

ラスト、明海は、仕事を辞めることを決意します。

生まれて初めて自分で道を選び取ろうと、自分の心の声に従ったのでした。

 

今まで自分を縛り付けていたのは、自分自身だったんじゃないかしら?

 

その他2作について

第3話 シュシュと猪

ツッコミどころ満載でした。感想は語りません。

 

第4話 梅田駅アンダーワールド

阪急神戸線岡本駅と 

阪急大阪梅田駅、阪神大阪梅田駅、JR大阪駅の地下に広がる地下街と就活生の物語。