本屋大賞2019 7位の作品 三浦しをん著「愛なき世界」
装画は、漫画家の青井秋さん作。精密な植物画は、飾っておきたいような美しさです。
お話に出てくる エッペンチューブやイチョウの葉、ピンセットやシロイヌナズナの種?などが ブルーの箔で押してあります。
青井秋さんの高級便箋(1セット 5000円!)「イリスの庭」にも箔押しが施されています。いや~美しい!!
装丁も凝っていて 気孔の柄の透写紙が挟んであります。
読む前から 植物学世界にいざなう趣向のようです。
ざっくりあらすじ
東京・本郷のT大(東大ですね)近くの洋食屋・円服亭の見習い、藤丸くんは、T大の研究室の本村さんに恋をしました。
本村さんは横浜の某私大で大腸菌の研究をした後、院試を受けて T大の植物学のマツダ研究室でシロイヌナズナを研究しています。
見た目が殺し屋風の松田教授と面倒見のいい川井助教、研究室仲間の岩間さんと加藤くん、円服亭の大将が主な登場人物です。
松田研究室が 円服亭に洋食の出前を頼んだことで 藤丸は、植物を愛し、その研究に没頭する人たちとの交流を温めていきます。
シロイヌナズナの研究に余念のない本村さんにほのかな思いを抱いた藤丸はある日、突然告白をしてしまいます。
植物が好きで 人との付き合いが苦手な本村は、面食らってしまい 結果お断り。
植物以外に興味はないのです。
植物には 脳や神経がないから 考えたりできない、「愛のない世界」に生きている、だから自分も愛のない世界を生きるのだ、と。
それでも 藤丸と本村、松田研究室の交流は続き(描かれ)ラストは…
ネタバレが嫌な方は ここでUターンお願いします。
えっ? ぽか~んなラスト 物足りん!!
登場人物に悪人はいなくて ほのぼのとした日常が描かれています。
謎多き 松田教授は 大親友を研究中の滑落事故で亡くしたという過去があり、このエピソードには泣かされました。
登場人物の一人ひとりのキャラが立っていて とても面白いです。
ユーモアに溢れた会話はクスっと笑わされ、楽しく読めます。
特に 藤丸くんは本当に「いい奴」で健気で応援したくなるキャラクター。
口は悪いが 大将が藤丸のことを可愛がっているのがわかって面白いです。
大将と藤丸の会話、本当に面白い!
で、恋愛はもとより苦手な本村さんは、自分から生身の男性とは距離を置いている感じ。
植物の世界に逃げ込んでいる、と言ってもいいぐらい。
他人の気持ちを推し量るのが苦手なのか 藤丸の好意にもあまり気づけず…それだけに 藤丸くんの人の良さが不憫に思えました。
小説の中でも 失恋した岩間さんが 本村さんは藤丸くんの気持ちを利用してるんじゃないか、と話すシーンがあり、ちょっと納得。
本村さんは研究の失敗を乗り越え、地道な研究の成果を発表しました。セミナーでの手応えは良好。
それを講堂の隅で聴いていた藤丸も感無量に…
藤丸くんの思いは一方通行で 本村さんが研究に没頭したい気持ちを理解することで 完。
つまらな~~~~い!!
不完全燃焼!
447ページありますが 本村さんの研究内容が子細に描かれていて…これをキチンと理解したところで、ストーリーになんら 絡んでこないよね、って思って ななめ読みの箇所もありました 苦笑
久しぶりに 遺伝子の話を読みましたわ。
中学時代にショウジョウバエの交配で習ったという記憶のみで…動物はラット、虫はショウジョウバエ。
植物はシロイヌナズナが研究対象に便利なようです。
なるほど、なるほど、と面白く読めた箇所もありましたが 最後の方、どーでもよくなる。
これ、ストーリー展開に関係ある??って思ってしまって。
巻末の参考文献など見たら、著者もかなり勉強されて、実際、東大や東京学芸大、京大、阪大、奈良先端科学技術大、立教大などの研究室の方の力も借りておられますので 研究の描写に熱が入るのもむべなるかな、ですが‥
その分を もうすこし登場人物の心の機微を丁寧に描いてあったなら 私好みだったのに、ちょっと残念でした。