2018年本屋大賞 2位の作品
本屋大賞受賞・ノミネート作品を中心に読んでいます。
ノミネート作品が決まったら コレは読まないだろうと思う作品を除き ほぼ全部予約してます。
2018年のグランプリは「かがみの孤城」でした。
早い段階で読んで、読み終えてからグランプリになって…読書が立て込んでて 感想かけないうちに日が立ってはや一年、ずっと下書きフォルダに眠っています。
かがみの孤城は、若い人からも絶大な支持をうけて 2位に大きく水を開けての受賞でしたが、2位のこの作品も絶賛されていましたよ。
実業界の寵児で天才棋士――。 男は果たして殺人犯なのか! ?
さいたま市天木山山中で発見された白骨死体。唯一残された手がかりは初代菊水月作の名駒のみ。それから4ヶ月、叩き上げ刑事・石破と、かつて将棋を志した若手刑事・佐野は真冬の天童市に降り立つ。向かう先は、世紀の一戦が行われようとしている竜昇戦会場。果たしてその先で二人が目撃したものとは! ?
日本推理作家協会賞作家が描く、渾身の将棋ミステリー!
Amazon 内容紹介より引用
この作品、将棋界の「砂の器」と呼ばれてる、とさっきWikipediaを読んで知りました。
私、父と二人劣悪な環境の中生きてきて、後に著名人になる、って砂の器みたい…って思ってたんです。
自分の読書記録ゆえ ネタバレあります、ご注意ください
563ページ、ずしりと重い本です。
読みきれるのか…とちょっと心配でしたが、興味をそそられて サクサク読めました。
埼玉県警の石破剛志。強面で口と愛想が悪いが 切れ者の刑事らしい。捜査一課でもない 若い佐野直也が事件の応援に駆り出され、石破と組むことに。
事件は天木山山中で発見された白骨死体が見つかったことで明るみに出ます。
推理小説は 犯人探しが醍醐味の事が多いですが、この小説は まず冒頭で犯人は棋士の上条桂介である、と匂わしています。
将棋の駒で有名な天童の駅に二人の刑事が降り立つところから始まります。山形の上の湯ホテルで 上条桂介がタイトル初挑戦にして、天才棋士・壬生芳樹竜昇(竜昇はタイトル名)との一騎打ち、という場面から始まります。
将棋のタイトルを取るには、年齢の壁があることも知りました。ただ強いだけではなく、決められた期間内に勝ち進んでいかなくてはいけない厳しい世界なんですね。
命を削りながらさしている棋士の様子が迫真の筆致で描かれています。
息の詰まるような攻防は読み応えがあります。
私は全く将棋の事はわからないのですが
飛車先を突く先手の■2六歩に□3四歩、■7六歩に□4ニ飛と角道を止めずに飛車を振った
文中より
将棋が趣味の方なら、この駒の動きがわかって この文の後に続く駒の動きの説明から一連の打ち合いも想像できてすごく楽しいのではないでしょうか?
将棋の駒をめぐる捜査の行方
初めて知ったのですが 将棋の駒には、美術品のような価値を持つものがあって 初代◯◯作、などと銘が入っていて 一組500万円もするものがあるそうです。
山中で発見された遺体と共に 紫の正絹の袋に入った江戸時代に作られた初代菊水月作の駒が出てきました。この駒こそ500万円は下らないものだったのです。
すぐに持ち主がわかるのかと思えば 高い駒は転売に転売を重ねていて 二人の刑事は 駒を追って聞き込みをして、緻密に調べ上げていきます。
刑事の動きとともに語られるのが 上条桂介の生い立ちです。
不幸な家庭に生まれ 父親は飲んだくれで 幼い桂介にろくに食事も与えず、暴力をふるっていました。母は精神を病んで自死していました。
桂介に将棋を教えたのは 元学校教諭の唐沢。子供がいない唐沢夫妻は 桂介に将棋を教え 食事を与えて陰ながら成長を見守っていたのですが、その唐沢が 桂介が東大に合格して地元・諏訪を離れる時に自分が退職の記念に買った「初代菊水月作の駒」をお餞別代わりにあげたのでした。
刑事が捜査をすすめる章と 桂介の生い立ちが描かれる章が交互に出てきて 読まされました。
向日葵は 桂介の心の中に眠る 母の象徴
小学校時代は父親のひどいネグレクトと暴力という苛烈な環境の中で育った桂介でしたがずば抜けて頭がよく、父の元を離れて東大に進学しました。
将棋への思いから ふと足を運んだ棋院での東明重慶という真剣師(賭け将棋で生きている人間)に出会います。彼との出会いが大きく運命の歯車を動かすことになるのでした。
学生だった桂介は 東明の将棋に魅了されつつも 宵越しの銭は持たず、後ろ暗い人生を送ってきた東明を警戒していましたが…東明の賭け将棋に巻き込まれ 恩師唐沢からもらった、大切な駒を手放す羽目に…
この駒を買い戻すべく 東大を出てから外資系企業へ就職し その後退職してIT企業を立ち上げて大成功をしていたある日 あの、ふるさとともに捨てたと思っていた 大嫌いな男(父親)が会社をたずねて来ました。金の無心が始まりました。そして 桂介自身も知らなかった 自身の出自を父の口から聞いた桂介は絶望の縁に立たされました。
幼い日の記憶の中の母は、ひまわり畑をぼんやりと眺めていた姿でした。
母を恋い求める気持ちが 向日葵、というモチーフで表されているのですね。
桂介はゴッホのひまわりにまつわる本を書い,ひまわりの複製画を買い求めます、母の愛を求めるように‥
IT長者として週刊誌に載るまでになった桂介の元に 行方知れずになっていた東明もたずねてきて また将棋をささないか、と。
賭け将棋しかしない東明と一番10万円で真剣将棋をさすと 会社を興して社長をしているうちに忘れていた「将棋への熱意」が蘇ってきたのでした、
それから 桂介は将棋で名を上げていきました。
東明には 過去に大切な桂介の銘駒をかたに借金をした借りがあった、だから 借りはお金がないので「仕事」で返す、してほしいことはないか、と問われた桂介は 自分では手を下せない「あの事」を頼んだのでした。
3年ほどして 病で余命幾ばくもない東明が将棋を指したい、と桂介の元を訪れました。東明の命が長くないことを悟った桂介は東明を車に乗せて 東明の希望通り天木山の山中へと入り 瀕死の東明と将棋を指しました。
思い残すことがなくなった東明は 匕首を取り出すと深々と自分のお腹に突き立てたのでした…
死に際に「おまえはプロになれ」と言われ、奨励会を経ず、イレギュラーな形で勝ち上がってプロになった桂介。
もともと記憶力がよくたくさんの筋を覚えているのですが 偏頭痛が起きると盤上に向日葵が現れて、指すべき場所を示してくれるんです。
これが 本のタイトルとなった「盤上の向日葵」
母の御加護かお導きか…愛する母が勝利へ導いてくれていたのですね。ここちょっと ファンタジー♪
平成6年12月 竜昇戦。
タイトルに挑戦する桂介は 対戦相手・壬生がカチカチと鳴らす扇子の開閉の音に将棋に集中できなくなり、3年前の忌まわしい記憶に囚われて…
大事な大事な一局で ありえない初心者のような凡ミスで敗退…
山形からの帰路で桂介を捉えようと 新幹線で張っていた石破と佐野の刑事コンビ、東京駅に降り立った彼に声をかけた時…
桂介は ひらりと身をかわして 母の元へと旅だっていきました…
桂介は殺してない!! でも、餞別替わりに 大事な駒を胸に抱かせてやったことで 3年後に足がついてしまうとは…
もし 裁判になって 東明が自分で匕首で命を断ったと証言しても…信じてもらえただろうか??
将棋の駒をはじめ 将棋にまつわることを知ることができて興味深い本でした。
桂介の生い立ちが気の毒で 色んな意味で余韻が残る小説です。
NHKBSでドラマ化された
知らなかったんですが2019年9月にNHKBSでドラマがほうそうされてたんですね!!
キャスト
上条桂介 - 千葉雄大(幼少期:大江優成)
唐沢光一朗 - 柄本明
東明重慶 - 竹中直人
佐野直子 - 蓮佛美沙子
石破剛志 - 大友康平
唐沢美子 - 檀ふみ
上条庸一 - 渋川清彦
盤上の向日葵 Wikipediaより引用
東明を竹中直人さん、ぴったり!!
上条桂介を演じた千葉雄大さんは 全くのイメージ違い for ne
実際にドラマを観てないのでなんとも言えませんが プリンス的な雰囲気の千葉雄大さんは悲惨な過去を背負ってる感じが全然しないんですけど!
機会があれば 再放送かオンデマンドなどで観てみたいです。
はい、次は、三浦しをん著「愛なき世界」読みます♪
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