happyの読書ノート

読書感想を記録していこうと思います。 故に 基本ネタバレしております。ご注意ください。 更新は、忘れた頃に やって来る …五七五(^^)

【綾崎隼】「死にたがりの君に贈る物語」、そういうことか!ラスト胸に迫る!!

綾崎隼さんの最新刊 読みました

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ちょうど、綾崎隼著「盤上に君はもういない」を読もうと思っている時に、新聞広告で見かけて図書館に予約していました。

 

あなたがいるから、私は小説を書こうと思います。
――著者が、自身に、読者に問い掛ける衝撃の問題作!

 

衝撃の問題作?? これは読まねば!と。

 

とても可愛い少女の表紙は、ティーンエイジャー向け?と思ったのですが…

 

奇抜な設定にぐいぐいと引き込まれて…もう中盤以降は、続きを読みたくて、ベッドにまで持ち込んで読んでました。

靄が晴れるように、謎が解けていく爽快感

全国に熱狂的なファンを持つ、謎に包まれた小説家・ミマサカリオリ。だが、人気シリーズ完結を目前に訃報が告げられた。奇しくもミマサカの作品は厳しい批判にさらされ、さらにはミマサカに心酔していた16歳の少女・純恋が後追い自殺をしてしまう。純恋の自殺は未遂に終わるものの、彼女は「完結編が読めないなら生きていても意味がない」と語った
やがて、とある山中の廃校に純恋を含む七人の男女が集まった。いずれもミマサカのファンで小説をなぞり廃校で生活することで、未完となった作品の結末を探ろうとしたのだ。だが、そこで絶対に起こるはずのない事件が起きて――。
著者自身の根源的な問いを内包する、痛切な青春ミステリ!

ポプラ社HPより

表紙を開けると、校内見取り図が出ていて…

こういうのが載っているときは、だいたい、殺人事件が起きますw

 

熱狂的なファンが集まるクローズドサイトで集められた、小説の登場人物によく似たタイプの7人が山形の廃村にある廃校で 小説同様の自給自足生活をして、未完となった小説の最後を探ろう、という企画。

 

リーダーの塚田他男性4人、ミマサカリオリを狂信的に愛し、リオリが亡くなって、「Swallowtail Waltz」の続きが読めないことに絶望し、自殺未遂をした中里純恋(なかざとすみれ)と、女性のリーダー格の山際さん、全く協調性がなく、悪態ばかりをついて攻撃的な佐藤友美の3人の計7人での共同生活が始まりました。

 

最初は、サバイバルゲームのような生活を描いていますが、それぞれ葛藤を抱えながらの共同生活、メンタルを保つのが大変な程の佐藤友美の激しい言葉。

 

そんな時、校内調理場に、死んだはずのミマサカリオリの最新刊の冒頭の原稿が落ちていました…

 

一気に疑心暗鬼になる7人。

誰かが嘘をついている…「この仲間の中に犯人がいる」みたいな緊迫感で先を読むのが怖いような、読みたいような葛藤と闘いながら読みました。

小説は、読んでいる誰かを救うメッセージがこめられている

ここからネタバレあります。

できれば読まない方が 読書を楽しめますが、気になる方のみ、自己責任でどうぞ…

 

 

 

 

 

 

 

 ミマサカリオリの訃報が出て「Swallowtail Waltz」の「完結編が読めないなら生きていても意味がない」と言って4階から飛び降りた純恋。

植木などに助けられ、大事に至りませんでした。

 

ミマサカリオリは生きていました、そして、自分の小説が誰かを救えるのだ、と知り、また続きを書く勇気を読者にもらいました。

読者がいてくれることで 自分もまた救われた、とミマサカリオリは気づいたのでした。

 

純恋は、人生に絶望しており、いつ死んでもいい、ただ「Swallowtail Waltz」の結末だけを知りたい、と思っていたので、「Swallowtail Waltz」の最終巻を読み終えたあと、死ぬなら、今日がふさわしい、と以前飛び降りた際に入院していた病院の屋上に向かいます。

 

その時、ふと目にとまった「あとがき」。

ミマサカリオリは、「あとがき」を書いたことがなかったのに、最終巻にはありました。

 

それは紛れもなく 純恋=死にたがりの君 に宛てた文章。

 

生きることが不器用で、生きているのが苦しいミマサカリオリから

 

生きることが不器用で不幸だと思い込んでいる 死にたがりの純恋へのメッセージ。

 

もう二度と、死にたいなんて言わないでくれませんか。

 

あなたがいるから、私は小説を書こうと思います。

 「死にたがりの君に贈る物語」あとがきより

 

(T-T)  ダー

 

オススメです!

 

 著者が、自身に、読者に問い掛ける衝撃の問題作!

…とあるのは、綾崎隼さん自身、小説を書く、ということが、誰かにネット上で攻撃される可能性を含んでいる、その反面、自身の作品が、誰かの心に届いた時、力になれるかも知れないという 思いを ミマサカリオリの言動にこめられているのだな、と思いました…。