第11回アガサ・クリスティー賞大賞受賞作
…にして 本屋大賞2022年グランプリ 『同志少女よ敵を撃て』を読みました。
Amazon評価 ★4.4
あらすじは、
独ソ戦が激化する1942年、モスクワ近郊の農村に暮らす少女セラフィマの日常は、突如として奪われた。急襲したドイツ軍によって、母親のエカチェリーナほか村人たちが惨殺されたのだ。自らも射殺される寸前、セラフィマは赤軍の女性兵士イリーナに救われる。「戦いたいか、死にたいか」――そう問われた彼女は、イリーナが教官を務める訓練学校で一流の狙撃兵になることを決意する。母を撃ったドイツ人狙撃手と、母の遺体を焼き払ったイリーナに復讐するために……。同じ境遇で家族を喪い、戦うことを選んだ女性狙撃兵たちとともに訓練を重ねたセラフィマは、やがて独ソ戦の決定的な転換点となるスターリングラードの前線へと向かう。おびただしい死の果てに、彼女が目にした“真の敵"とは?
Hayakawa Onlineより引用
真の敵とは? それを知りたいのもあり、読み始めました。
読み終えるのに疲れました。
479ページの長編の割に、心に響く言葉も少なく、感動も薄かったです。
世界史の授業で第二次大戦の項目も習ったはずなのに、詳しく知らなかったから、第二次大戦終戦の1941~1945年の独ソ戦について知見を得られてよかったですが。
本屋大賞は読むことにしているので読んでみました。
本作は、2021年にアガサ・クリスティー賞を受賞されていますが、執筆中に今日のような世界状況になるとは、著者御本人も驚かれているのではないでしょうか。
戦争がテーマなので、ある程度は覚悟していましたが、あまりにもむごたらしいシーンが続き、読むのが辛かったです。
実際の戦争は、こんなもんじゃないのでしょうけれど、血しぶき、肉片、脳漿が飛ぶ…
狙撃教官のイリーナと女性狙撃小隊のメンバーとの会話も軍隊ゆえか淡々としていますし、心揺さぶるような人間ドラマがない。
登場人物の描き方が薄っぺらく感じました。
多少の違和感も…
⚠ネタバレあります、ご注意ください。
主人公・セラフィマは1924年生まれ、ソビエトの寒村・イワノフスカヤ村で猟師の母と二人暮らし。
父はセラフィマが生まれる前に亡くなっていました。
10歳の時に初めて銃を手にした少女・セラフィマ。
故郷の村を襲い、母を撃ったドイツ兵を憎み、銃殺された母にガソリンをかけて焼いた赤軍のイリーナを憎み、その仇を取るために、帰るところのなくなったセフィマは狙撃兵になるべくイリーナに付いていきます。
この時、セラフィマ18歳、高校3年生というお年頃。
的を撃ったことはあっても、獲物を撃ったことはあっても、人間を撃つことはできない…そう思っていた彼女もやがて、優秀なスナイパーになり、倒した人間の数を競い、誇っていくようになります。
狙撃兵は、人間ではなく、感情を消した、殺人器官となるのです。
1942年から、第二次世界大戦終戦の1945年までのお話です。
最終章のスタンドプレー&会話は21歳の少女のセリフではなく、成熟した軍人(大人)のセリフのようで、ストーリーと登場人物に乖離を感じました。
拷問室で、手に釘を射たれる場面も、あっさりとしていて、ことの重大さ、悲惨さ、セラフィマが感じた痛みが全く伝わってこないのです。
仇敵のドイツ兵、ハンス・イェーガーを倒す場面も、出来過ぎくん。
軍人がそんなにあっさりセラフィマの思惑通りになるとも思えず、ここは作者の都合よく話がすすみます。
戦争を知らずに育った多くの日本人は、戦争の実態を想像するのも難しく、おびただしい屍や、火薬の匂いや、様々なものが腐敗したり、焼け焦げる匂いなどわかりません。
人が目の前で撃たれて死んでいくのも想像でしかない。
故に、頭の中に展開する脳内ドラマの輪郭がぼやけているような、漠然とした印象でした。
文字を追って、ただひたすらに脳裏に像を描く作業は、テーマが重いだけに読書の醍醐味を半減させ、疲れました。
⚠ネタバレ
故郷イワノフスカヤ村で仇敵と定めた、ドイツ人、ハンス・イェーガー、そして母の遺体に火をつけ、両親の写真を投げ捨てた曹長・イリーナ
ハンスには、恐るべき手を使って復習を果たしますが、イリーナとは家族のような関係になります。
最後にケーニヒスベルクの要塞から撃ったのは、かつてイワノフスカヤ村の学校の唯一の同級生・ミハイル。
彼は、白旗をあげたドイツ軍の女性を凌辱しようとしていました。
自分は何のために戦うのか?
「女性を守るため」に戦う。
その信念を貫いて、幼なじみのこめかみを撃ち抜いたのでした…
友人曰く「戦争特需」の売れ行き?と ^^;
第一章「イワノフスカヤ村」でのイリーナの行いには、読むのをためらわせるぐらいの嫌悪感を感じました。
第二章「魔女の巣」では、セラフィマら、イリーナに集められた女性たちが狙撃兵になるための訓練の様子が描かれ、セラフィマという少女が一人前のスナイパーになるための技術と心構えを学んでいきます。
銃の扱いや、焦点の合わせ方など、訓練が詳しく説明されていますが、銃を見たことも、扱ったこともない読者には冗長に感じました。
第三章「ウラヌス作戦」以降、ケーニヒスベルクの戦いなど史実なので、パソコンを傍らに置いて、検索しながら、Google Mapを見ながら読みました。
東欧、ソ連、ドイツの戦いのことは詳しく知らなかったので、勉強になりました。
ソ連の切手の図柄にもなった「狙撃の女王」の異名を持つ実在の女性スナイパー、リュドミラ・パヴリチェンコも、狙撃教官・イリーナの友人として登場します^^
壮大なテーマを扱った力作、意欲作だとは思うのですが、登場人物の描き方に深みがなく、感動も余り得られず。
本屋大賞に輝いたのも、本屋大賞ノミネートの1ヶ月後にロシアのウクライナ侵攻が始まったという時世が、後押ししての受賞のような気がします、for me
今は、ひたすら、ほっこりする感動作を読みたいです…