昨年の4月に図書館に予約していて、ようやく回ってきた角田光代著『タラント』。
ワタクシが予約した時点で303人待ち、発刊から1年経った今でも230人待ちの人気の小説です。
目次:
片足の祖父、不登校に陥る甥、〝正義感〟で過ちを犯したみのり。心に深傷を負い、あきらめた人生に使命―タラント―が宿る。著者五年ぶり、慟哭の長篇小説
引用元:中央公論新社HP
慟哭の??長編小説ですか…
Amazon ★4.3 ★5=52%
443ページ、なかなかのボリュームの本です。
家事の片手間では読めないかと思い、この重い本をバンコク行きの機内に持ち込み、行き帰りの飛行機の中でじっくり読みました。
手荷物、重かった…
「慟哭の」と紹介されていたので、読了後に嗚咽を漏らしたらどうしよう、と心配していたけれど、それは杞憂でした。
私には、あまり刺さらなかった物語。
サクサクと読み進められなかった原因は?
主人公・みのりの性格が苦手。
ワタクシの場合、主人公や登場人物に感情移入できない場合や、こんな人いる?っていう謎の人物設定などがあると一気に読む気がなくなってしまいます。
今回は、グジグジしているみのりに対して批判的な思いを持ちつつ読んでいました。
そのせいか、ページの進みか遅かった💦
一見バラバラな事象がラストで見事に繋がっていくところがポイント
主人公・みのりについて
みのりは地元・香川から進学のために東京に旅立つ時、晴れ晴れとした解放感を味わいました。
ところが大学で友人が出来ない心細さから、誘われて「麦の会」というボランティア団体に所属します。
難民キャンプへのスタディツアーで、みのりがとった行動が間違いだと知ってトラウマに。
東日本大震災がきっかけで知り合った夫と結婚後、実家とゆるくつながりながら祖父・清美の過去への扉を開いていきます
香川の実家のおじいちゃん・清美はとても寡黙
本編は、実りの語り部分と、祖父・清美の戦時中のモノローグが交互に出てきます。
辛い過去を生き抜いて、日本に戻ってきたのに、自分が生きていてよかったのかと葛藤していて。
いつしか、自分が言葉を発することはなくなってしまいました。
心頭滅却すれば火もまた涼し、ではないですが、戦時中の行軍では空腹や、なぜ上官に殴られるのか、などと考えていたら身が保たない、だから感情をなくして生きてきたのですね…
爆撃で片方の膝から下を失くしてしまったおじいちゃんは静かに余生を送っているように見えました。
おじいちゃんとパラリンピック選手の交流
涼花、という差出人の手紙が祖父のもとに届いていました。
どういう関係の人なのか…
それは若いパラアスリートで義足のハイジャンプの選手でした。
義足でパラリンピックに出場しないか、と清美は随分前(第一回東京オリンピックの頃)に声をかけられていて…
戦争、難民、東日本大震災、パラリンピック、コロナ禍
一見バラバラなお話が、寡黙なみのりの祖父・清美の存在により繋がって行きます。
タラントとは、ギリシャ語で「才能」
人それぞれに神様から与えられた才能に気づいたなら、いつだって人はスタートラインに立てるのです。
まだ、眠りから覚めていない我が身のうちの才能を探してみるのもいいかも。
みのりの友人・玲がかっこいい
小説は号泣には至らずでしたが、
世界中の子供の人権について考えさせられました。
みのりのボランティア仲間の友人の玲が難民キャンプの取材をして世界中を飛び回っています。
断片的にニュースで知る、難民キャンプの子どもたちの情報より、リアルで厳しい現実を知りました。
この作品を書くための参考文献にそういった本が並んでいました。
日本で平和で安全に暮らせる事がいかにありがたく得難い事なのかを改めて考えさせられました。
ということで、タラントで号泣しなかったけれど、死と隣り合わせだったり、毎日ギリギリのところで生きている子どもたちについて知ることが出来たのは収穫。