小川糸さんのツバキ文具店、キラキラ共和国に続く、ツバキ文具店の鳩子の物語、第3弾、
『椿ノ恋文』を読みました。
ツバキ文具店 初版 2016年
キラキラ共和国 初版 2017年
そして
椿ノ恋文 初版2023年
6年の間に、鳩子の家族も増えていました ^^
Amazon★4.3 ★5=67% 2023年11月1日発売
巻頭に、ツバキ文具店 店主 雨宮(守景)鳩子の
次女・小梅、長男・蓮太朗の誕生報告、
代書屋再開のお知らせのお手紙が掲載されています。
前回のキラキラ共和国から6年、刊行の間が開いたのは、鳩子の育休?と思わされます。^^
⚠️ ネタバレしてますご注意ください。
紫陽花
幼馴染の舞ちゃんからの依頼で、代書屋再開。
義理のお母さんから頂く手作りのお料理に2回連続で髪の毛が混入していて…
お母さんごの関係は悪くないので、やんわりと指摘できないだろうか、と言う相談。
代書屋は、依頼人が書けない、書きにくいことを頼まれるので なかなか書き方、言い回しが難しい内容が多いです。
抗議ではないので、やんわりと…髪を縛る手ぬぐいを添えて渡すことを提案。
亡くなった先代が
「私だって毎回、苦労して苦労してやっとの思いで書いてたんだから」と言っていたな、と。
お友達のマダムカルピスが、時間だけが解決できる「トキグスリ」の話しをしてくれました。
「嫌なことも全部含めて、すべてが自分の人生の栄養になったって実感するの。」
「何か起きても、まずはそれに逆らわずにこの手で受け取って、そしてまたそっと水に流して。その繰り返し。中略 無駄な抵抗をする方が、逆に溺れたり、水飲んだり、もっと自体を悪くしてしまう気がするなぁ」(出典:椿ノ恋文 P53 )
転んだって、タダでは起きない、失敗の中でも何か掴んで立ち上がる、ぐらいの勢いで!(笑)
何だって、自分の栄養にするぞ、の意気込みでいきたいです。
「柳に雪折れなし」という言葉があります。
そう、無理に逆らうとポキっと折れちゃうから、のらりくらりで行きましょう!!
金木犀
先代(鳩子の祖母)とおつきあいしていた男性の親戚、という男性から手紙が届きました。
ブンブン紅茶店(実在)で、大島からやってきた美村冬馬という男性とスノーフレークケーキを食べる鳩子。
美村は先代の雨宮かし子と心を交わしていた美村龍三の親戚の男性です。
龍三のラブレターを預かって帰ります。
代書の依頼が来ました。
江ノ電・鎌倉高校前のホームのベンチで依頼人・茜さんに会った鳩子。
ガンでもう長くない。
結婚する一人娘に手紙を書きたいが手術で手が上がらなくなってしまい…、
でも手紙を遺してあげたい、と訴える茜さん。
できる限りじっくりと話を聞いて、書いたのは…
かえ(楓)ちゃんへ で始まる左手で書いた、ちょっと下手くそな文字。
でもそれが一生懸命に書いた思いが伝わる感じです。
店にヤクザの風貌の男がやってきました。
レイバンのグラスをかけた知的ヤクザ。
弟分がペットフードの輸入販売を初めたので、購入者に御礼状を添えることにしたといいます。
簡単な御礼状、とても可愛いです。
退職届の依頼も舞い込みます。
退職の理由は、一身上の都合が一般的ですが、
会社都合で辞めなければならない場合は、やや具体的に自分の都合で退職するのではないことを明記するといいそうです。
風変わりな依頼もやってきます。
認知症の女性・小森蔦子さん(50代後半)が自分に宛てた手紙を書いてほしい、と。
どんどん物忘れが酷くなっていくので、自分のことを書いた手紙が欲しいのだそう。
「ミツローさんは、どんなふうに人生を終えるのが理想?」
「きちんとお別れができるのは、やっぱり癌だね。
癌だったら残された時間がわかってそれなりの準備ができるもん。」
この会話は、2019年に刊行された小川糸さんのホスピスを舞台に描かれた『ライオンのおやつ』を思い出さされました。
まだ小さかったミツローさんの連れ子のQPちゃん(陽菜 はるな)も中学3年生。
「私のこと、嫌いになっちゃったのかなぁ」 最近、口を利いてくれないQPちゃんの態度に落ち込む鳩子。
嫌いになっちゃったのかなぁ、という言葉は、本当の親子なら出てこないですよね。
切ない。
椿
お正月休みの最後の晩、夏目漱石の草枕を読んで日本の古典文学に目を通していた鳩子。
先代の本棚から文庫本を取り出しぱらぱらめくっていると一枚の絵葉書がパラリと落ちました。
雨宮かし子様 美村龍三
古いハガキ。
半世紀前、先代と妻子持ちの美村が付き合っていたという証拠となるハガキです。
消印はもうかすれて見えないものの、
ブラジル移住50年記念の切手(1958年発行)が貼ってありました。
鳩子の母、レディ・ババが生まれる前のことのようです。
伊豆大島の三原山噴火(1986年)のお見舞いの手紙は、投函されずに残っていました。
美村さんと大島で龍三、かし子二人の手紙を一緒に成仏させることになりましたが、
1人で男性の元に行くのも…と高校受験が終わったQPちゃんに
一緒に大島に行かないか、と誘う手紙を書いて、QPちゃんともう一度いい関係にもどりたい鳩子でした。
明日葉
店の前にヤブツバキがあるのでツバキ文具店…と思っていた鳩子ですけれど、
先代の美村との恋愛を知って、三村氏の故郷大島の椿を思ってツバキ文具店にしたかも?
大島行きのフェリーの待合にQPちゃんは現れず、ひとりさびしく大島に向かう鳩子。
美村が船着き場に迎えに来てくれていて、二人で浜で手紙を焼きました。
叔父さんの生まれた地区の波治加麻神社にお参りし、報告。
冬馬はポルトガル出身のトム(29歳)と二人で暮らしています。
冬馬の両親は性的マイノリティを理解しない親でした。
自分が同性愛者であることをカミングアウトする手紙を書いてほしい、と鳩子に頼みます。
フェリー乗り場に送ってもらう道すがら、1人で歩いていたQPちゃんに出くわします。
来たんだ…1人でどうするつもりだったんでしょうか?
不思議なのは(作者都合?)なぜ、鳩子に電話の一本も入れないのでしょうか?
スマホ、という文明の利器があるのに。
フェリーに乗り遅れちゃった。
島に着いたよ。
今回は一緒に行かないよ。
なんでもいい、自分の意思や状況をなぜ知らせない?
それは、後で感動の場面を演出するためかな?と 深読み。
ちょっとひっかかりました。
「私のお母さんになてくれてありがとね」、鳩子が寝てると思い込んだQPちゃんが、背後からそっとつぶやきました。
起きているのがバレないように、必死で涙を堪える鳩子、この場面は胸が熱くなります。
QPちゃんの合格がわかったのはこの数日後のことでした。
蓮
QPちゃんから鳩子に手紙が届きました、ひとつ屋根の下に住んでいるのに。
面と向かって言いにくいことは、文字にするといいですね。
冷静に対処できるし。
QPちゃんは、鳩子の言葉に傷ついていました。
「QPちゃんは、美人さんになったね、美雪さん(亡くなったミツローさんの先妻)に似てよかったね」 という言葉がすごいショックだった、と。
何気ない言葉がQPちゃんをこんなにも傷つけていたんだ、と反省する鳩子でした。
「長生きして、いつまでもそばにいてください。」
QPちゃんの反抗期は幕をおろしたようです。
QPちゃんとランチを食べたあと、二人で寿福寺へ。
QPちゃん、おんぶさせて?
寿福寺は、先代が一番好きだった場所。
初デートでミツローさんがおんぶしてくれた場所。
その場所で、大切なQPちゃんを背中で受け止める鳩子。
失くしたものを追い求めるより 今、手のひらにあるものを大事にしたらいいんだ、って
お隣さんから
もう我慢の限界です。
次回は警察に通報します。
とにかくうるさくてうるさくて夜中まで眠れませんでした。
クリニックで睡眠薬を処方されました。
いい加減にしてください。
このままでは仕事ができません。
抗議文。
バーバラ婦人(夫人ではない)がフランスに行った後に住んだ人とはお付き合いがなく、ひたすらこわい。
子どもに書かせるのではなく、鳩子が子どもになりかわって謝罪文を書きました。
バーバラ婦人がフランスから帰国のさいに守景家に泊まることになり
みんなで女子会。
鳩子が、お隣さんを気遣うので
だったらここにお呼びしましょうよ、とバーバラ婦人の逆発想、ナイス!
恐る恐る隣の人を誘いに行くと 隣人 隣人・安藤夏は意外にも唐揚げ持ってやってきました。
お互いのことを知らないから垣根があるけれど、仲間に引き込んでしまえばこっちのもん?w
女子会の後で、
皆で鎌倉宮へ厄割石で厄払いにいきスッキリ。
人生、生きていればいろいろあるけれど、良いことも悪いことも全部ひっくるめて、経験として楽しめば良い、とバーバラ婦人は言いますが…
悪いことはなかなか楽しめるものではありません。
後になって、あんなこともあったね、と思い出話にはなるでしょうけれど…。
ツバキ文具店の雰囲気が失われていたのは…
タイトルにもなっている、ツバキ文具店の先代の恋愛を描きつつ、
日常の子育ての悩みなどもあり、
主題がぶれているような?
何を一番語りたかったのか?
あれも、これも、と詰め込んで散漫になっていたような。
鎌倉の周辺のお店の名物紹介は読者へのサービスかもしれませんが、
名物を食べたり、鎌倉の名所を語ったりする場面がだんだん冗長に思えてきて、最初は読むのをやめようかと思ったほどです。
ストーリーに関係ないことが長く語られすぎるのは個人的にはちょっと…
最初は面白かった、バーバラ婦人や男爵というニックネームも
今回はパンティー(男爵の奥様)、マダムカルピス、レディババ、ジャコメッティさん…
なんだかなぁ…。
極めつけの知的ヤクザ、知的ヤクザが連呼される件はこちらが恥ずかしくなる感じ。
初めてツバキ文具店を読んだ時の、スロウで丁寧な暮らし、
季節ごとのしきたりを重んじながら淡々と進む古民家暮らし。
あの新鮮な感動が懐かしいです。
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