happyの読書ノート

読書感想を記録していこうと思います。 故に 基本ネタバレしております。ご注意ください。 更新は、忘れた頃に やって来る …五七五(^^)

日本最大級の偽文書、「椿井文書(つばいもんじょ)」を読みました

新聞広告で、この本を見つけました。

広告には、

貴重な史料が全部ウソだったら?

プロをも欺く壮大な偽史の真実とは?

 

のキャッチコピーに心を鷲掴みにされて 読んでみることにしました。

 

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中学、高校で習った日本史の資料で だまされたものもあるのか?と思いましたが心配ご無用、椿井政隆が作成した偽書は、地域限定です。

 

山城国(現在の奈良県木津川市)にあった椿井村の椿井政隆が山城や近江、河内、大和あたりの豪農が武家と繋がりがあったかのようにみえるように「家系図を書き換え」たり、村同士の山の支配権争いのために「偽の鳥瞰図を描いたり」して報酬を得ていたようです。

 

数百点にも及ぶ偽書…速筆だったのでしょうか?

当時、墨書で書き記すことは根気のいる作業だったでしょうし、字を書ける人も今よりもずっと少なかった時代、政隆は重宝されていたのでしょうね。

 

利権に絡むことですから、報酬も弾んでもらえたかも。

 

この本の著者の馬部さんは、偽書づくりは、趣味と実益を兼ねていたのではないか、とおっしゃっています。

日付をわざと存在しない日を書いたり。。。例えば昭和64年5月みたいに、元号を違って書いたり、未来の日付を書いています。

江戸後期にできた村の名前が、16世紀の地図に載っていたり、というような例も。

 

虚実入り交じっているので、ウソを見抜きにくいのでしょう。

 

日本史に大きな影響はなさそうですが、郷土史編纂などに影響を与えそうです。

間違った地図を元に、町おこしをしているところもあるようで、そうなると、真実の開示は、迷惑、困惑…です。

 

偽文書と指摘されながら、正当な中世史料として世に出回った例として「椿井文書(つばいもんじょ)」と通称される文書群がある。この文書群は、江戸後期に興福寺出入りの家を出自とする椿井政隆によって、近畿一円の顧客の求めに応じて、土地争いを有利にするなどの目的で作成された。中世より椿井家に伝わっている文書を政隆が写した、という体裁で作成されており、虚実が入り混じった寺社縁起、系図、絵図などを、他の文書と複雑かつ巧妙に関係させることで信憑性を持たせている。

偽書Wikipediaより引用

 前々から、気づいていた研究者もいらっしゃいますがスルーされていたようです。

 

誰かがどこかで正しておかねば、と大阪大谷大学准教授の馬部さんが仔細に研究し本に著されたのです。

 

以前、枚方市の職員だったという著者・馬部隆弘さん。

枚方市教育委員会が2008年に発行した小学生向けの副読本「発進!!タイムマシンひらかた号」に七夕伝説、アテルイ首塚、王仁墓に関する椿井文書も登場するのだそう。

馬部さんは、訂正を申し入れたそうですが「子どもたちが地元の歴史に関心を持つことの方が大事」と却下されたとか。

同様に、郷土史なども椿井文書を参考にしている場合、編纂者は悩ましいことでしょう。

罪作りな 椿井政隆。

 

椿井政隆のみならず、甲斐国では、武田信玄の末裔と名乗りたい人たちのために偽家系図が多く作られたそうですから、いつの世も、嘘をついて お金を払ってでも有利にことを運び、粉飾に腐心する人はいるから 椿井政隆も儲かったのでしょう。

 

その数が多すぎて、一見信憑性のあるように見える資料だけに騙されますね。

 

コツコツと綿密に詳細を調べた著者の根気には脱帽です。

 

Wikipediaには、なんと!あの「古事記」すら偽書である、とされています。

 

広告のキャッチコピーに、釣られて読んだ本でしたが、偽書について知ることができて面白く読みました。