これはフィクション? ノンフィクション?
読み終わった瞬間、すごく微妙な気分になりました。
「奇跡」というわりに感動も何もなくて、ボーゼン。
まずこれはフィクションなのかノンフィクションなのか、という疑問。
終章を読み終え、最後のページを捲ると書いてありました。
「本書は、取材に基づいたフィクションです。」
…更に謎。
写真家・田原桂一さんと片岡孝太郎さんの元・妻で後に田原さんとご結婚された田原博子さんのみ実名です。
博子さんの舅・片岡仁左衛門を清左衛門、元夫・孝太郎さんを清十郎、息子の千之助さんを清之助、と名前を置き換えて書かれています。
皆さん存命中の人物で、著名人ゆえ、配慮されたのでしょう。
時折、「博子さんの日記」の一節が紹介されるのですが、これは博子さんが書かれたのか、林真理子さんが書かれたのか?
Amazon評価 ★3.2
商売臭を感じて興ざめ
主人公の田原博子はつねづね私に言っていた。
「私と彼とのことは、いつか何かの形で残したい思いはあるのだけれど、本になんかできるわけはない。絶対に知られてはいけないことがいっぱいあるのですから」
それもそうだよね、と私も頷いた。
「奇跡」プロローグ 6ページより引用
この文章を読んだ印象では、田原博子さんの「いつか何かの形で残したい」という熱い思いが「奇跡」となって世に出たのか、と思いました。
が、田原博子さんのインスタグラムを拝見すると、
「長きにわたりお付き合いさせていただいておりました林先生より田原と私のことを綴りたい、本に残したいというお話を頂いたのが数年前。」と書かれています。
ずいぶん前から、林真理子さんか、講談社かが、書籍化に向けてアプローチされていたんですね。
林真理子さんと田原博子さんが、子供の幼稚園の「ママ友」だった、という「奇跡」がこの本の出版につながったのでしょう。
この投稿をInstagramで見る
書評を書いた茂木健一郎氏はこれはファンタジー、と。
綱渡りのような生活をして、不倫を成就させる情熱的なカップルはたくさんいらして、田原桂一さんと博子さんの愛の物語が特別「奇跡」ではないと思ってます。
田原桂一さんは、日本ではあまり知られていなかったけれど、フランスで30年、写真家として活動され、パリ市芸術大賞はじめ、数々の賞を受賞されたアーティスト。
奥様になられた博子さんは、梨園の妻として、ご自身も名前の知られた方。
だからこそ、小説になりえたのだと思います。
林真理子さんの知人だった、と言うのも大きいです。
友人なので、全面的に博子さん応援団で好意的に捉えられていますし。
ご主人も不倫、奥様も不倫、ダブル不倫なのですが、純愛物語に昇華されて、講談社のHPでは絶賛する著名人の方もいらっしゃいます。(当たり前w)
これが、若手俳優やタレントさんがしたことだったら、ネットで厳しく叩かれていると思うのですが。
林真理子さんは、書くべきではなかったのでは?
林真理子さんの著書は、本当に面白く、興味深く、ファンが多いのでどの著作も出版されると、あっという間に○万部! 重版出来!となります。
数々の珠玉の名作のなかに、この「奇跡」。
異色作。
事実に基づいて描かれていて、多方面に配慮されているので、林真理子さんの筆の勢いが感じられないのです。
だから、知り合いのことを書いちゃ駄目なんですよね。
客観性がなくなってしまいますから。
出版された2月頃には、Googleのおすすめ記事などに出ていて読んでみようと思って読んだのですが…まず、小説かどうかも疑わしい本で、それで微妙な気分になったのです。
本は165ページ、上下に余白あり、あっという間に読めます。
内容の割に1600円(税別)は、感動がない分、高い、と感じました。
あ、私は図書館で借りましたけど!