一穂ミチさん、3作目、読みました。
Amazon ★4.3 (★5=54%)
読むのが楽しい本でした。
一穂ミチさんの著作は、『スモールワールズ』と『パラソルでパラシュート』の2作を読みました。
『パラソルでパラシュート』は、シェアハウスに済むお笑い芸人たちと解雇の日が近い主人公・美雨、崖っぷちに立つ者の思いや悩みが綴られています。
くすりと笑わせるセリフがたくさん散りばめられていて、なおかつ、お笑い芸人を続けるか否か…
誰しもが経験する人生の岐路で悩みながらも、希望に満ちたラストでほっこり、いい本でした。
『砂嵐に星屑』も、読みやすくて楽しくて、用事をしていても、早く続きを読みたくなりました。
春夏秋冬、の四章にわかれています
春と冬のボリュームが大きく、夏が一番軽いです。
本作も大阪弁がほんわかしてて、大阪弁ネイティブの私は読みやすかったし、そのニュアンス分かる〜♪っていう感じでした。
一穂ミチさんは、大阪のご出身なので、大阪弁の会話も自然で楽しいです。
…というか、ユーモアに溢れた会話は、漫才のように面白くて、一穂ミチさんの『パラソルでパラシュート』でも楽しませてもらった、笑えるボケ・ツッコミな軽妙な会話、笑わせてもらいました^^
人生の小さな悲哀と希望@在阪放送局勤務
《春》
東京勤務から戻ってきた長身で美人のアラフォーアナウンサーが過去と対峙するお話
《夏》
大学生の娘との確執がある報道デスクの自分との対話
《秋》
ウェザーセンターの由朗とTK(タイムキーパー)の結花の同棲は、結ばれない運命
《冬》
何事にも自信のないADが取材対象の青年と関わる内に、自ら一歩踏み出す勇気を得た話
それぞれ、カラーの違うテーマですが、少しずつ登場人物が被っている連作短編集です。
とにかく、会話が面白くて笑ってしまいます。
扱っているテーマは、どこにでもありがちな内容ですが、軽い会話の中に、なるほど〜と気付きを与えてくれる言葉がキラリと光ります。
放送局が舞台で、アナウンサーやニュースデスク、TK、ADが主人公です。
テレビ局の内部に想いをはせながら読みました。
「機材だらけの副調整室は20度以下に保たれている」とかCMから番組への入の声がけとか…内部事情の小ネタも楽しいです。
全編、描き下ろし。
みんな多かれ少なかれ、心に刺さった小さな棘や、後悔やうまくいかないもどかしさを持っているけれど、ラストはゆる〜く希望へとつながっています。
夏は大阪北部地震(2018年)と熊本地震(2016年)、秋は、2018年の台風21号(関西空港連絡橋にタンカー衝突)、冬は阪神淡路大震災(1995年)の思い出が登場します。
ニュースデスクの中島は、「人様の不幸でメシを食ってる分際」と自嘲し、娘には「マスゴミ」と呼ばれているけれど、
報道は、災害時には、情報源であり国民の心の拠り所となる大切な存在。
大阪北部地震で家が揺れたときに、中島は、自分が勤務するなにわテレビではなく、やはりNHKにチャンネルを合わせてしまう…という皮肉も面白かったです^^